●読者の世界観と気分を大切にする
–雑誌の休刊も相次ぐなど、雑誌市場全体の低迷が叫ばれる中で、「InRed」は今年1〜6月期で発行部数が業界では異例ともいえる前期比3割増しとなっていますが、大幅に部数が伸びた理由を教えてください。
箕浦 まず前提としては、「InRed」のメイン読者層である今の30代はすごく元気の良い年代で、かつ働いていて自由に使えるお金がある程度あり、雑誌が好きな世代だという背景があります。
私たち編集部は、当たり前ではありますが、「そのような読者が何を求めているのか?」「何を特集したら喜ぶのか?」ということを基本にして誌面づくりに取り組んでいます。最近では記事タイトルで「欲ばり女子」「ゆる華奢」などという言葉を使っています。「欲ばり女子」というのは「欲ばる」という言葉をポジティブに捉えていて、「ゆる華奢」は「着やせ」という意味ですが、無理して着やせするんじゃなく「ゆる」く「華奢」に見せるということなんです。そういう新しいコンセプトを「キャッチー」な表現で提案していくということは、常に心がけています。
–毎号表紙に掲載されている、その号のコンセプトを表すコピーも「キャッチー」ですね。
箕浦 表紙のコピーは、毎回ものすごく苦しみながらつくっています。例えば、12月号の表紙コピーである「冬の肌見せで華奢な女」は、一見意味がわからないですよね? でも「冬なのに肌を見せるのか」ということで、読者が興味を持って「InRed」を手にとってくれます。肌を見せることによって、きゃしゃに見せられるというのは、よくある着やせのテクニックですが、それを単なる「冬の着やせ」というストレートな言い方にせず、読者が「これは何?」と思うようなコピーを考えています。オシャレすぎても真面目すぎてもダメなので、できるだけ「InRed」の読者の気分に合ったコピーをつけるように心がけています。
●読者の一歩、半歩先を行く
–読者の求めるニーズをつかむのは難しいと思いますが、そのために取り組んでいることはありますか?
箕浦 毎号、読者アンケートを実施して誌面づくりにフィードバックしてはいますが、読者を集めて直接ヒアリングするようなことは行っていません。それよりも、編集部員は日々30代女性と仕事や私生活で接しているので、そういう日常の場面でのちょっとした情報や30代女性のニーズ、トレンドなどを吸い上げることを重視しています。身の回りの友人、知人、仕事相手がどういう意識を持っているか、何を求めているかとか、どういう気分なのかということは、すごく敏感にリサーチしています。
読者のニーズがそこにあるのかわからないけど提案してしまうというのは、読者離れを引き起こす要因になりかねません。むしろ、読者の関心に寄り添いつつも、まったく同じ歩み方ではなく、読者の半歩とか一歩先の新しい情報を常に発信するようにして、雑誌側の独りよがりにならないように気を付けています。
–つまり、部数増のために、1〜6月の間で「InRed」のコンテンツや構成・企画を意識的に大幅に変えたりなどはしていないということでしょうか?
箕浦 ええ。雑誌として軸がブレないことも重要なので。もちろん登場するモデルやタレントは1〜2年前と変わっていますが、雑誌を代表する看板モデルがいるというわけでもありません。
モデルの話でいいますと、「InRed」はファッション誌なので洋服をちゃんと見せるのがもちろん大事ですが、読者がモデルを見て「わぁ、かわいい」「ステキ」などの感情を持てるような写真を載せることを意識しています。そういう写真を増やすことにより、「ハッピー感」や「楽しさ」があふれる誌面づくりにこだわっています。