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東大に毎年500名合格、学習塾・鉄緑会の意外すぎる実態…合理的な学習環境

文=清談社、協力=坂部赳大
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鉄緑会のHPより

「東大受験指導専門塾」とも呼ばれ、難関とされる国公立大学医学部に毎年多くの合格者を送り出している学習塾「鉄緑会」。「鉄」は、東大医学部の同窓会である「鉄門倶楽部」、「緑」は東大法学部の自治会である「緑会」から取られているとされ、1983年の設立以来、その独自の学習メソッドと合格実績で業界でもトップクラスの存在となっている。2023年度の実績では、東京・代々木の本部校だけで東京大学に520名の合格者を出し、なかでも定員がわずか100名と狭き門である東京大学・理科三類(医学部)に36名もの生徒が合格。さらに東京大学以外にも、国公立大学医学部に355名、慶應義塾大学医学部に95名、慈恵会医科大学に92名、順天堂大学医学部に82名が合格している(以上の数値はすべて本部校のみの実績)。

 鉄緑会の大きな特徴の一つが、入塾のハードルの高さだ。入塾希望者は厳しい入会選抜試験に合格する必要があるが、開成中学校や桜蔭中学校、筑波大学附属駒場中学校、麻布中学校など指定校15校(2023年10月現在)の生徒は中学1年の4月であれば試験を経ずに入塾できる(東京校のみ)。原則、中高6年一貫校の生徒を対象としており、オリジナルのテキストを使用して高校の学習範囲までを中3までに終わらせ、大学入試までには高校までの範囲を4周するカリキュラムになっていることでも知られている。また、東京校では、講師陣も大半が現役東大生と東大卒業生、しかも有名中高6年一貫校の出身者からなる点も特徴の一つだ。

 そんなトップレベルの生徒が集う鉄緑会の実態について、鉄緑会OBでYouTubeチャンネル「鉄緑会1位に学ぶ京大英語」を運営する坂部赳大さんに聞いた。

「私は高校1年時に鉄緑会の大阪校に入会しました。鉄緑会はもともと中高一貫校の生徒向けに作られた塾なので、どちらかというと中学から入会するのがスタンダードです。しかし私は公立中学を卒業したのち高校受験を経験してから入会したので、イレギュラーでした。公立中学出身の生徒は中高一貫校出身の生徒に比べ進度の差から大きなハンデがあります。鉄緑会の授業は英語と数学がメインですが、英語は私のような公立中学出身の生徒でも、得意なら高1からレギュラークラスについていけると思います。一方で数学は、中高一貫校に通い、中学時点で高校の範囲まで学習しているような生徒でないと少し難しいかもしれません。私自身も、高1の時は数学のレギュラークラスに入れませんでした。でも、そういうレベルの生徒用に、高校数学を一から学べるクラスがあって、そこでできるだけ早く勉強して追いついて、高2から通常のクラスに合流するというかたちでした」(坂部氏)

「6年間のうちに高校全範囲を4周」となると、学習ペースが速いだけでなく、個々の授業時間も膨大になりそうだ。

「そういうイメージを持たれがちですが、授業の回数自体はそれほど多くなく1科目あたり週に1回だけです。授業1コマの時間は他塾と比べてもかなり長く3時間ありますが、熱心な先生だともう1時間延長して、4時間とか、4時間半ぐらいまで行くこともあります。宿題も毎回しっかり出ますし、宿題と復習の両方をこなす余裕を持って次の授業に臨むということをしっかり続けていく必要はあります」(同)

 宿題や予習・復習といった課題が多いと、脱落してしまう生徒も出てきてしまうのではないだろうか。

「英語、数学だけ受けている人だったらそんなに大きな負担にはならないだろうと思いますが、 高2になるとそれとは別で数Ⅲ、物理、化学など科目数が増えてくる生徒もいます。例えば高2の時期にこれら5科目全てを取ると、1週間のうち5日授業を受けて、残りの2日で復習、宿題をこなすことになるので、負担は小さくないと思います。一方で、私の周りでは辞める生徒はそんなに多くなかったように思います。中学から入って高校の時点で辞めた人も何人かはいましたが、少なくともその人たちに関しては学習についていけないというより、進路の変更や勉強以外のことを優先させたいという理由が大きかったんじゃないかと感じます」(同)

志望校を絞り込んだ授業はなし

 受験を控えた、高校3年生時の1年間はさらにハードなカリキュラムになりそうだ。

「高3になると、受験対策が本格化してきて、毎回授業中に時間をとって本番形式の問題を解くことで、入試の得点力を上げるにはどうしたらいいかフィードバックを繰り返すという形式にシフトします。一方で鉄緑会は、志望校別のクラス分けをしていません。夏期講習などで『東大英語講習』のような大学別の講座はありますが、通常授業で大学別のクラス分けはないです。基本的に、鉄緑会のカリキュラムのなかで使用される問題は、おおよそ東大の入試形式がベースになっていて、それはどのクラスでも共通しているので、講習以外の授業では京大を受ける人でも東大の問題を比較的多めに演習していくことになります」(同)

 大学受験に臨むにあたって、メンタル面も重要なファクターとなる。トップクラスのエリートが集まっているため競争が激しく、生徒同士がライバルのようなギスギスした雰囲気になっていないのだろうか。

「私自身の経験では、生徒同士はそこまで固く結束しているという感じでもなく、かといって険悪な雰囲気では全くないという印象ですね。ライバル視するというよりも、非常に優秀な生徒が集まっているので、そんな人たちと競えるなら頑張る価値あるなと思わせてくれるような環境でした。クラス分けもバランスよく構成されているので、学びやすかったですね」(同)

生徒と教師の近い距離

 鉄緑会は生徒と教師の距離が近いともいわれるが、実際のところどうなのか。

「講師は鉄緑会の出身が多くて、だいたい8割以上はそうだと思います。それに現役大学生も多いので生徒たちと世代も近く、熱心に指導してくれます。テキストや教材は同じなので授業の方向性は決まっていると思うのですが、ある程度講師に裁量が委ねられていて、とくに高3の授業では、生徒の得点力を伸ばしていけるような授業を工夫して作っている講師が多い印象です。講師の多くは、かつて自分も鉄緑会の生徒として授業を受けているので、教える側になった時にどこを改善したらいいのかという点がより明確なんだと思います」(同)

 鉄緑会の出身者が講師となることで、鉄緑会的なメソッドがより強固となり、そのカリキュラムも自然とブラッシュアップしていくという体制になっているようだ。そのぶん、鉄緑会出身者同士の結束も深いともいわれる。

「生徒は、講師が在籍している大学を目指すことが多いので、合格すれば先輩・後輩の間柄になる場合もあります。そういった意味では、OB同士のつながりが深い傾向はあるかもしれないですね。鉄緑会は、大学受験という目的に特化した合理的で考え抜かれた学習環境を作ってくれるという意味で、最高峰の学習塾だと思います。いまから東大、京大を目指す生徒さんにはぜひ勧めたいですし、私も高校生に戻って、どこの塾に入るか選べと言われたら、やっぱり鉄緑会を選ぶと思います」(同)

 その合格率の高さゆえ、スパルタ教育機関のようなイメージを持たれることもある鉄緑会だが、その実態は、大学受験という明確な目標に向けて、やるべきことを究極的に研ぎ澄ました学習塾といえそうだ。

(文=清談社、協力=坂部赳大)

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