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イオン系スーパー100店閉鎖の深層…スーパー事業赤字でも中間最高益、イオンのポートフォリオ経営

2026.10.14 18:00 2026.10.14 18:03 企業
文=BUSINESS JOURNAL編集部、協力=永田由紀/流通コンサルタント
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マルエツの店舗(「Wikipedia」より)

●この記事のポイント
イオン傘下のU.S.M.H(マルエツ・カスミ・いなげや)は2026年3~8月期に32億円の営業赤字となり、2030年までに約100店を閉鎖する(新規出店約50店で純減約50店)。一方イオンはツルハ連結でドラッグ事業が伸び、営業利益1307億円と中間期最高を更新。その実像と、中小企業が学べる3つの視点を解説する。

 10月9日、イオン傘下で首都圏に「マルエツ」「カスミ」「いなげや」などを展開するユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス(U.S.M.H)が、2030年までに約100店を閉鎖する方針を明らかにした。その4日後、親会社のイオンは2026年3~8月期(中間期)の連結決算を発表し、営業収益と営業利益がともに中間期として過去最高を更新した。

 子会社は店を閉め、親会社は最高益を出す。見出しを並べると矛盾して見えるが、決算の中身をセグメントごとに追うと、いまのイオンがどうやって利益を出しているのかがはっきり見えてくる。この「ずれ」には、業種や規模を問わず経営に通じる論点がいくつも含まれている。

●目次

売上は14%増、それでも営業赤字

 U.S.M.Hの中間期の営業収益は5447億円で、前年同期から14.0%増えた。一方、営業損益は32億8300万円の赤字に転落した(前年同期は1億6800万円の黒字)。純損失は46億円に達し、通期では最終赤字80億円の見通しに修正している。最終赤字は2期連続となる。

 売上が伸びても利益が残らない理由はコストにある。仕入れ値の上昇、電気代などのエネルギー費、最低賃金の引き上げに連動する人件費が重なった。食品スーパーの営業利益率は数%にとどまるのが一般的で、コストがわずかに上がるだけで利益がほぼ消えてしまう。節約志向を強める客を前に、上がったコストをそのまま売価に乗せることも難しい。

 イオンの四方基之副社長は13日の会見で、中東情勢に伴うコスト上昇や節約志向の強まりに触れた。そのうえで、自社の「価格政策や販促施策は十分に機能しなかった」とも述べている。原因を外部環境だけに求めなかった点は、記事の後半で触れる教訓にもつながる。

「100店閉鎖」は純減50店の入れ替え計画

 閉鎖する店の選定基準として、U.S.M.Hは築40~50年といった店の古さ、店舗の状態、人口動態を挙げた。地域は限定していないが、郊外の店が多くなる見通しだという。一方で、今後3年間に約50店の新規出店も計画しており、店舗数の純減は約50店にとどまる。グループ店舗の平均店齢は、12.1年から2030年には10年まで下がる計算だ。

 3年間のコスト構造改革では、合計80億円の効果を見込む。内訳は次の4つだ。

 不採算店舗の見直し:24億円
 不採算事業の見直し:18億円
 物流の効率化:14億円
 その他:24億円

 数字を並べると、閉店は単純な縮小ではなく、古い店を新しい店に入れ替える「スクラップ・アンド・ビルド」だとわかる。

「食品スーパーの店舗は、建物と設備が古くなるほど光熱費も修繕費もかさみます。インフレ下では、その差が利益に直結します。老朽店を閉めて新店に置き換えるのは、むしろ遅れていた投資を取り戻す動きとみるべきでしょう」(流通コンサルタント・永田由紀氏)

セグメントで見る「稼ぎ頭」の交代

 イオン連結の中間決算をセグメント別に見ると、構図はさらにはっきりする。

 総合スーパー(GMS):営業損失126億円(前年同期から124億円悪化)
 スーパーマーケット(SM):営業損失1億7600万円(前年同期は約129億円の黒字)
 ヘルス&ウエルネス:営業利益597億円(370億円増)
 ディベロッパー・エンターテイメント:営業利益542億円(132億円増)
 総合金融:営業利益261億円(9億円減)

 祖業の小売り2事業が赤字に沈んだ一方、ドラッグストアを中心とするヘルス&ウエルネスと、モール事業を担うディベロッパーの増益がそれを上回った。その結果、連結の営業利益は1307億円(10.7%増)、中間純利益は133億円(約3.3倍)となった。

 ただし、数字を読むときにはいくつか注意が要る。

①ヘルス&ウエルネスの大幅増益は買収効果が大きい。 2025年12月にツルハホールディングスとウエルシアホールディングスが経営統合し、ツルハがイオンの連結子会社に加わった。この増益の多くはその効果で、既存事業の自然な伸びとは分けて見る必要がある。

②純利益3.3倍には前年の反動が含まれる。 前年同期に計上した特別損失が減ったことが寄与している。

③直近の勢いはむしろ鈍っている。 6~8月の3カ月だけを見ると、営業利益は前年同期より約10%減った。7月の熊本地震などで約42億円の特別損失も計上しており、決算発表の翌日にイオン株は年初来安値を更新した。市場は「最高益」を手放しで評価しているわけではない。

ポートフォリオ経営の実像

 それでも、事業の組み合わせが利益を下支えしている事実は動かない。各事業の収益構造は次のように異なる。

 ドラッグストア:医薬品・調剤・化粧品を扱い、粗利率が食品より高い。食品を安く売って来店頻度を上げ、医薬品や化粧品で利益を確保するモデルが定着している。
 モール事業:専門店テナントから賃料を受け取る仕組みで、売上がそのまま利益を左右する小売りより収益が安定しやすい。
 金融業事:カード決済や銀行を通じて、グループの買い物客から手数料収入を得る。

 結果として、イオンは「スーパーが客を集め、別の事業が利益を稼ぐ」形に近づいている。ただし、ここを都合よく解釈するのは危うい。

「スーパーは集客装置で、赤字でも構わないという見方は正確ではありません。イオン自身が価格政策の失敗を認め、下期はPB(プライベートブランド)の強化や経費の見直しで黒字化を目指すと明言しています。ほかの事業が稼いでいる間に本業を立て直す時間を確保できている、というのが実態に近いと思います」(同)

 実際、イオンは下期に向けて、年間売上が10億円を超える「メガアイテム」のPB商品を、約100品目から300品目規模に増やす計画を示している。スーパー事業の収益改善を諦めたわけではない。

中小企業にも応用可能な視点

 イオンほどの規模がなくても、応用できる考え方はある。

1. 事業ごとの損益を見える化し、撤退基準を先に決めておく
 U.S.M.Hは、築年数や人口動態といった閉店の判断基準を外部に示した。中小企業では、部門別・店舗別・取引先別の損益を出していない会社も少なくない。どこで稼ぎ、どこで失っているのかが見えなければ、撤退の判断はいつまでも先送りになる。

2. 「集客役」と「利益役」を設計段階で分ける
 客を呼ぶ商品やサービスと、利益を生むものを意識的に分けて組み立てる。ただし、ここで言う集客役は「意図して設計したもの」に限られる。結果として赤字になっている事業に集客役という名前をつけて放置するのは、設計ではなく言い訳にすぎない。

3. コスト上昇を吸収できる収益源を一つ持つ
 自社ブランド商品のような粗利の高い商品、保守契約や会員制のように継続して入ってくる収入などがその例だ。薄利多売の事業だけで会社全体を支える構造は、インフレ局面では特にもろい。

「多角化には体力が要るので、中小企業がいきなり新規事業に打って出る必要はありません。まずは既存事業の中で、粗利の高い商品や継続課金型のサービスの比率を少しずつ上げていく。それだけでもコスト高への耐性はずいぶん変わります」(同)

「途中経過」としての100店閉鎖

 U.S.M.Hの改革が計画どおりに進むかどうかは、閉店で浮いた経費を新店、物流、デジタルにどれだけ振り向けられるかにかかっている。イオンはネットスーパー「Green Beans(グリーンビーンズ)」も展開しており、実店舗とネットの役割分担をどう描くかも問われる。閉店する地域では、日々の買い物の場が失われることへの目配りも欠かせない。

 今回の100店閉鎖は、イオンの危機を示すものでも、ビジネスモデルの完成を示すものでもない。インフレという環境変化に合わせて事業の組み合わせを組み替えていく、その途中経過と見るのが妥当だろう。中小企業にとっての学びも、規模の大きさにあるわけではない。数字で事業を見ること、基準を決めること、決めたら動くこと。この3点は、どんな規模の会社でも明日から始められる。

(文=BUSINESS JOURNAL編集部、協力=永田由紀/流通コンサルタント)

【主な参照データ・出典】
流通ニュース:U.S.M.H/30年までに100店舗閉鎖、コスト構造改革で80億円の効果見込む
流通ニュース:イオン 決算/3~8月営業収益・営業利益が過去最高を更新
ITmedia ビジネスオンライン:イオン中間決算、過去最高の売上高5.9兆円 熊本地震の特損41億円
時事通信:イオン、純利益3.3倍 ドラッグストアが好調
株探:イオンは続落し年初来安値更新、直近の6~8月期営業益が10%減
ダイヤモンド・チェーンストアオンライン:ウエルシアとツルハがついに経営統合

BusinessJournal編集部

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公開:2026.10.14 18:00