まいばすけっと、平均日販がセブン超え…首都圏1323店の小型スーパーが伸びる理由

●この記事のポイント
イオン傘下の小型スーパー「まいばすけっと」の2025年度平均日販は71万7000円で、セブン-イレブン(69万9000円)を上回った。首都圏1323店の全店直営、PB「トップバリュ」、標準化による高速出店が強みだ。コンビニ各社の客数減やローソン「Lミニマート」参入を踏まえ、2030年度の日販80万円・2500店目標への課題を分析する。
イオン傘下の都市型小型スーパー「まいばすけっと」の1店舗あたり平均日販(1日の売上高)が、72万円近くに達した。セブン-イレブンの全店平均を上回る水準である。物価高のなかで存在感を増すこの業態は、コンビニの客を奪っているのか。公開されている数字と各社トップの発言から、その実像を整理してみたい。
●目次
コンビニ最大手と並んだ日販
イオンが2026年4月に開いた決算説明会によると、まいばすけっとの25年度(26年2月期)実績は日販71万7000円、店舗数1323、売上高3300億円。増収増益だった。吉田昭夫社長は、コンビニと比べても競争優位性のある水準まで来たとの認識を示している。
同じ期の大手コンビニ3社の全店平均日販を並べると、セブン-イレブンが69万9000円、ローソンが59万8000円、ファミリーマートが58万5000円。数字の上では、まいばすけっとは業界トップのセブンをわずかに上回り、ローソン、ファミマとは10万円以上の差がある。
9月には日本経済新聞が、まいばすけっとがパート・アルバイトを年1万人規模で採用していると報じた。出店のペースに合わせて、人の確保も大がかりになっている。
ただし、この比較をそのまま受け取るのは早い。
まず商圏が違う。まいばすけっとは首都圏に集中して出店しているが、コンビニ各社の数字は地方や郊外を含む全国平均だ。人口密度の高い都市部で勝負する業態と全国をカバーする業態を同じ物差しで測れば、前者の数字は高く出やすい。
運営形態も異なる。まいばすけっとは全店が直営で、コンビニはフランチャイズが中心だ。コンビニの日販は加盟店オーナーの収入に直結する指標だが、直営のまいばすけっとでは人件費も家賃も本部が負担する。売上が同程度でも、利益の出方や分配の仕組みは別物である。
商品構成の違いもある。スーパーは生鮮や日配品、加工食品の比率が高く、一般に粗利率はコンビニより低い。
「日販は店の集客力を見るうえで便利な指標ですが、まいばすけっとの場合は『首都圏・直営・食品中心』という前提がつきます。コンビニの全国平均とそのまま比べるより、同じ都市部のコンビニや他社の小型スーパーと比べることで、初めて実力が見えてきます。それでも、小さな売場で70万円台を安定して出しているのは、立地の選び方と運営の精度が高いことの表れでしょう」(流通コンサルタント・永田由紀氏)
選ばれる理由は「価格」と「食の日常使い」
消費者がまいばすけっとを使う最大の理由は価格だ。イオンのプライベートブランド(PB)「トップバリュ」を前面に出し、グループの共同調達も生かしている。
わかりやすいのが、おにぎりである。まいばすけっとは6月、生産効率の改善などを通じて手巻おにぎり7品を税別108円に改定した。さらに9月23日には、原料米価格の見直しを理由に税別98円まで引き下げた。
コンビニ側も動いている。ローソンは手巻おにぎり全品を10円、ファミリーマートは4品を11円値下げし、セブン-イレブンは「銀しゃりむすび」6品を100円で売るセールを実施した。いずれも米価の落ち着きを受けた対応だが、コンビニの看板商品であるおにぎりで価格を比べやすくなったこと自体、消費者の関心が値段に向いていることを示している。
日経の報道によれば、まいばすけっと側も、物価高を背景にコンビニから流れてくる客がいることを認めている。
もう一つの理由は品ぞろえの性格だ。肉や魚、野菜といった生鮮品、牛乳や豆腐などの日配品がそろい、仕事帰りに夕食の材料をまとめて買える。「今すぐ食べるもの」に強いコンビニに対し、「家で作って食べるもの」を近所で安く買える。この点が、都市部で増える単身世帯や共働き世帯の生活リズムに合っている。
高速出店を支える「標準化」と「直営」
2030年度までに1000店以上を上積みする計画を掲げながら、店の質をどう保つのか。吉田社長は決算説明会で、店舗オペレーションを簡素化・標準化したことで、出店を続けても管理レベルを落とさない仕組みができたと説明している。
作業が標準化されていれば、新しく入った人でも短期間で戦力になる。年1万人規模の採用を回すには、教育にかかる時間とコストを抑えることが欠かせない。
直営であることも効いている。吉田社長は、オーナーの世代交代のような制約を受けずに事業を運営できる点を強みに挙げた。コンビニ業界では加盟店オーナーの高齢化や後継者の確保が長年の課題になっている。本部の判断だけで出店、改装、品ぞろえの変更を進められるのは、機動力の面で大きい。
裏側では、グループのプロセスセンター(PC:食品の加工・包装拠点)の活用を広げ、DXも推進した。これらが前期の増益に結びついたという。
「小型店は1店舗あたりの人員が限られるので、発注や品出しをどこまで単純にできるかで収益が決まります。加工済みの商品をPCから届け、店では並べるだけにする。この分業を徹底できるのは、グループに大規模な調達・物流・加工の基盤があるからで、単独のチェーンがすぐに真似できるものではありません」(同)
コンビニ側の見方と対抗策
コンビニ各社はどう受け止めているのか。
セブン-イレブン・ジャパンの阿久津知洋社長は4月の決算説明会で、小型スーパーの増加による大きな影響はないとの見方を示した。価格帯や品質の面でビジネスモデルが異なり、すべてが競合しているわけではないという説明だ。店内調理のファストフードや接客、新商品を次々に投入するスピードで差別化を図る方針である。一方で同社は26年度に200店舗の純増を計画し、東京を中心とした都市部を強化エリアに挙げている。同じ商圏で顔を合わせる場面は、今後さらに増えるだろう。
注目したいのは客数だ。26年2月期の既存店客数は、セブンが0.9%減、ファミマが1.2%減、ローソンが0.8%増だった。3社とも客単価の上昇で売上は伸ばしたものの、来店客数の維持には苦労している。客数減の要因は複合的で、小型スーパーの影響だけを切り出すことはできない。ただ、節約志向が強い局面で、日常の買い物の一部が低価格業態に移っていると考えるのは自然だ。
ローソンは、同じ土俵に上がる選択をした。5月28日、小型スーパーの新業態「Lミニマート」の1号店を東京都小平市に開業した。ローソンストア100の店舗を改装したもので、店舗面積は約250平方メートルとコンビニと同程度。生鮮品や日配品の品数を約5割増やし、首都圏を中心に年度内に6店舗まで広げる計画だ。同社は実証実験との位置づけを崩していないが、コンビニ大手が小型スーパーの需要を認めた動きとして意味は小さくない。
2500店・日販80万円への課題
イオンは30年度に、まいばすけっとで日販80万円、2500店舗、売上高約7000億円を目指す。セブンもまた、30年に平均日販80万円の達成を掲げている。都市の「日常の食」をめぐり、両者が同じ数字を目標に置いている構図だ。
課題は少なくない。一つは物件。1000店以上を上積みするには、首都圏の限られた物件を確保し続ける必要があり、コンビニやドラッグストアとの取り合いは避けられない。二つ目は人手で、年1万人規模の採用を続けられるかは、賃金水準と職場環境に左右される。三つ目は競合の増加だ。Lミニマートやトライアルの「トライアルGO」など、同じ小商圏を狙う業態が相次いで出店している。
日販の上積みに向けてイオンが挙げるのは、首都圏で需要の高い即食系デリカ(弁当・総菜類)の供給体制づくりだ。ただ、ここはコンビニが最も得意とする領域でもある。価格で優位に立つまいばすけっとが、弁当や総菜の品質と品ぞろえでどこまで迫れるか。80万円に届くかどうかは、そこにかかっている。
「コンビニとミニスーパーの境界は年々あいまいになっています。コンビニは価格を下げ、ミニスーパーは即食を強める。互いの強みを取り込もうとする以上、最終的には立地と運営コストの勝負になるでしょう。消費者にとっては選択肢が増える、健全な競争だと思います」(同)
「二択」から「使い分け」へ
まいばすけっとの日販72万円は、物価高と都市の世帯構成の変化という追い風を、グループの調達・物流基盤と標準化した直営運営で受け止めた結果だ。一方で、コンビニの役割がすべて置き換わるわけではない。店内調理の商品や各種サービス、新商品を切れ目なく投入する力は、依然としてコンビニ独自の価値である。
消費者は「コンビニかスーパーか」の二択ではなく、用途ごとに店を使い分ける段階に入っている。その使い分けのなかで、どの業態がどれだけの取り分を得るのか。30年度に向けた各社の数字が、その答えを示すことになる。
(文=BUSINESS JOURNAL編集部、協力=永田由紀/流通コンサルタント)
【主な参照データ・出典】
流通ニュース:まいばすけっと/30年度日販80万円へ
食品新聞:イオン「まいばすけっと」2030年度に日販80万円×2500店舗体制へ
流通ニュース:コンビニ3社の業績比較(前編)
流通ニュース:コンビニ3社の業績比較(後編)
流通ニュース:セブンイレブン/小型スーパーとは「競合していない」
流通ニュース:まいばすけっと/手巻きおにぎり7品を税別98円に値下げ
日本経済新聞:まいばすけっと、平均日販72万円
日本経済新聞:ローソン、小型スーパー「Lミニマート」開業











