NTT東日本は1月28日からインターネット上に仮想商店街(モール)を開設した。光回線サービス「フレッツ光」の加入者が対象で、特典や割引等の導入で光回線契約者の維持につなげる狙いがある。ネットに不慣れであったり、ネット通販に不安を覚えるユーザーでも買い物ができるように、電話で買い物のサポートを行ったり商品代金を通信料金と一緒に払えたりするのが大きな特徴となっている。商品は食料品や衣服、旅行商品など多岐にわたり、ネットに不慣れな顧客を囲い込むことを狙う。
スマートフォーン(スマホ)向けサービスの動きも活発だ。スマホ向けに無料通信アプリを提供しているLINEは昨年12月20日、ネット上に「LINEモール」を開設。現時点ではまだAndroid端末のみ利用可能だが、衣類や化粧品、雑貨などを扱っている。「LINEモール」は専用アプリをインストールして利用するかたちで、利用者が出品することもできる。スマホで商品を撮影して販売価格を入力すれば手続きが完了。出品手数料として売り上げの10%がLINEに入る仕組みだ。
低価格比較サイト「価格.com」を運営するカカクコムは13年11月26日、女性向けアンダーウェアのオンラインセミオーダーサービス「All For Me(オールフォーミー)」を立ち上げた。最大160万通りの組み合わせの中からパーツごとに色の柄を選び、自分だけの商品をデザインでき、お揃いのショーツも購入できる。カカクコムが衣料品製造・ネット通販を手がけるのは初めてであり、ITサービス企業が製造業へ参入するのは異例だ。
●流通大手の本格参入が競争に拍車
経済産業省によると、国内ネット通販市場の規模は12年に前年比12.5%増の9兆5000億円に拡大した。13年には百貨店(売上高6兆2171億円)やコンビニエンスストア(同9兆3860億円)を抜き、スーパー(同12兆7224億円)に迫る勢いで成長を続けている。ネット通販市場ではアマゾンと楽天の2強を他社が追い上げる構図であり、距離を置いていた流通大手もネット通販に本腰を入れ始めた。
セブン&アイ・ホールディングス(HD)の鈴木敏文会長兼最高経営責任者(CEO)は昨年11月18日に開催されたセブン-イレブン・ジャパンの創業40周年記念式典で、「ネットとの融合」の考えを示した。鈴木会長が「次の10年」の成長の原動力とみているのが、急拡大するネット消費と実店舗を組み合わせるオムニチャネル戦略だ。店舗やネット、テレビ、通販雑誌(カタログ)などあらゆる販路を統合して、全体の売り上げを最大にすることを目指す。
スマホの登場によって、消費者は家でも移動中でもリアル店舗とネットショップの違いを意識することなく、購買行動に移れるようになった。消費者がネットとリアル(な店舗)を行ったり来たりする購買行動に、売る側が対応しなければならない。こうした状況にセブン&アイHDはオムニチャネル戦略で対応すべく、1000億円を投資してグループで扱っている全商品をスマホで注文できるシステムを導入する計画だ。
流通大手であるセブン&アイHDの本格参入により、ネット通販市場は文字通り戦国時代に突入する。果たしてアマゾンと楽天を超えるプレイヤーが生まれるのか、今後の動向が気になるところである。
(文=編集部)