LINE、買春や暴行事件の温床に…ID検索機能制限にも抜け道、新たな問題露呈
PCデビューは30年前に発売されたシャープのX1という、筋金入りのデジタル中毒であるITライターの柳谷智宣氏。日々、最新デジタルガジェットやウェブサービスを手当たり次第に使い込んでいる。そんな柳谷氏が、気になる今注目のITトレンドの裏側とこれからを解説する。
LINEに関するトラブルが急増している。極めつきは7月に発覚した広島での死体遺棄事件。LINEでのやりとりがきっかけになった。とはいえ、こちらはLINEだから起きた事件というわけでもない。問題は、あまりニュースにならない出会い系のトラブル。LINEが児童買春や暴行といった事件の温床になっているのだ。
LINEは通常のSNSと異なり、標準設定でインストールすると、電話帳に登録されているすべての友だちとつながってしまう。これはこれでトラブルの元になるのだが、多くの人は手軽に使えるというメリットに惹かれて利用し始めた。スタンプという手軽にコミュニケーションが取れる機能も人気で、若年層を中心に大ブレイク。国内だけで1000万人以上のユーザーを持つことになった。
当然、多くの子どもが利用しているこのサービスに目を付ける者も出てくる。乱立する出会い系の掲示板やアプリの中で、ユーザーがLINE IDを掲載。興味のある内容を書き込んでいるユーザーに連絡する仕組みだ。話し相手を募集することもあるし、援助交際相手を探していることもある。社会経験の少ない子どもは、お金を払うという相手と不用意に会ってしまう。逆に、女子の書き込みにホイホイと出て行った男性が美人局にはまって、強盗に遭うこともある。
相次ぐ事件を受けて、やっとLINEで18歳未満のID検索機能が停止されることになった。auのAndroid端末ではセキュリティ保護のために、2012年12月20日から停止されていたが、その範囲が拡大するのだ。まずは、13年9月にNTTドコモとソフトバンクのAndroidスマホで、ID検索機能への制限がかけられる。機能制限がかかった後にID検索をすると、年齢認証を行う必要がある。その際、キャリアに登録された情報を元に認証を行うので、適当な年齢を入力することはできない。また、18歳以上のユーザーが検索する際も、未成年ユーザーのIDを見つけることはできない。
●大人に見えにくくなる、未成年の問題
ID検索機能が使えなくなれば、少なくとも出会い系のトラブルは激減するだろう。とはいえ、親名義のスマホを使っていれば意味がない。さらに、iPhoneアプリの対応はまだこれから。日本ではiPhoneのシェアが断トツ1位なので、しばらくは火種は残る。このおかげでiPhoneへの機種変更がさらに進んだら、皮肉だ。
しかし、子どもが手軽にクローズドなコミュニケーションツールを使っている状況には変わりがない。従来のデジタルサービスなら、ユーザビリティやプライバシー保護はメリットになるが、LINEだと諸刃の剣。12〜19歳までだけでも約150万人が利用しているLINEは、今までにない問題を抱えている。画像を含む情報が一瞬で大人数に伝播できるので、いじめも従来とは異なるかたちに変わっていくだろう。大人の目にはさらに見えにくくなる。
ID検索機能だけを停止して安心するのはまだ早い。アプリ側はさらなるセキュリティ機能を提供すべきだし、親や学校は子どもへのIT教育を充実させる必要がある。テクノロジーは逆行できないとはいえ、ここは強引にでも制限をかけなければ誰も幸せにならない状況に突き進んでしまうだろう。
(文=柳谷智宣/ITライター)