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ステーキの元祖・銀座スエヒロ、なぜ倒産?激安専門店台頭が呼ぶ、業界の世代交代

文=編集部
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ステーキの元祖・銀座スエヒロ、なぜ倒産?激安専門店台頭が呼ぶ、業界の世代交代の画像1「いきなり!ステーキ 公式サイト」より

銀座4丁目スエヒロ」として高い知名度を誇るステーキレストランを経営するスエヒロ商事(東京都中央区/上嶋棟一郎社長)が、東京地裁から破産手続きの開始決定を受けた。民間信用調査会社によると負債総額は9億7200万円。1910(明治43)年に大阪で誕生した「ビフテキのスエヒロ」をルーツとし、75年に設立された東京・日比谷のレストラン「スエヒロ」の事業を77年に継承した。東京・銀座の「銀座4丁目スエヒロ」、新橋の「航空会館スエヒロ」のステーキレストランや居酒屋「御殿山ガーデンレストラン」を経営しているほか、都内4つの百貨店の弁当・惣菜売り場にテナントを出店。13店を展開していたピーク時の94年12月期には年商23億円を上げていた。

 しかし、デフレ経済下の消費不況や東日本大震災に伴うレストラン事業の低迷、飼料用藁の放射能汚染問題による食肉の風評被害の影響を受けて業績が悪化。次々と店舗を閉鎖し、12年12月期の年商は11億8900万円に落ち込んでいた。

 13年に入って取引先などへの未払いが発生するなか、「銀座4丁目スエヒロ新宿店」「航空会館スエヒロ」を相次いで閉店。14年1月までに「御殿山ガーデンレストラン」などの事業を別会社に譲渡していた。規模を大幅に縮小し、自己破産を申し立てた。

しゃぶしゃぶ、ステーキの元祖

 スエヒロといえば、ステーキの代名詞となるほど有名である。1910年3月、上島歳末(うえしま・としまつ)氏が大阪市北区堂島で洋食屋の「弘得社」を始めたのが起源。その後、同じ堂島に「ビフテキのスエヒロ」を開業した。ビフテキの呼称はスエヒロから全国に広がった。日本におけるステーキの元祖といってよく、2010年3月に創業100周年を迎えた。

 スエヒロの大きな特徴は、創業者の縁者にのれん分けしたこと。スエヒロの源流である「永楽町スエヒロ本店」(大阪市)のほかに、関東と関西に8社の「スエヒロ」を冠した運営会社がある。スエヒロ商事は、その中の1社で、スエヒロの名前で商売している人々の集まりが「スエヒロ会」だ。

 創業者の上島氏は1939年に創業30周年を記念して、大阪市北区の大阪天満宮に「牛像」を奉納した。郷里である但馬にちなみ、黒毛和牛の起源である但馬牛を模して黒御影石に刻まれた等身大の臥牛像である。スエヒロ会では、創業の原点となった弘得社の創業日である3月10日を「牛の日」として牛像の参拝を続けている。

 スエヒロは「しゃぶしゃぶ」の生みの親として知られる。薄く切った肉を煮立たせただし汁にくぐらせて専用の鍋で加熱し、野菜・豆腐・葛きりなどの食材を煮込んだものと一緒にタレにつけて食べる鍋料理である。「しゃぶしゃぶ」の名称は1952年に大阪のスエヒロが自店の料理として出した時に命名したもので、これが始まりとされている。スエヒロがしゃぶしゃぶを始めたきっかけは「夏場に焼肉が売れない」対策だった。現在では冬の鍋料理として定着している。

「スエヒロ会」のメンバーが全国に展開している運営会社の間には資本関係はなく、店の雰囲気やシステム、価格などがまったく違う。業態は高級ステーキレストランからしゃぶしゃぶ専門店、ファミリーレストラン、居酒屋、学生食堂などさまざまである。銀座に「スエヒロ」の屋号の店が別にあるが、スエヒロ商事とは違う会社が運営している。

激安専門店の開業

 時代によって呼称が変わった。ビフテキはステーキに変わり、ステーキレストランはステーキ・ハウスと呼ばれるようになった。日本のステーキ・ハウスはオープンキッチン方式をとる店が多く、テーブルではなく鉄板焼きの形式でカウンターに客を座らせ、目の前で調理する。皿に乗せず、鉄板にアルミを敷いた上に、料理人が切り分けて箸を添えて供する。高級そうな雰囲気だが、フォークやナイフを使わずに箸で食べられるとあって人気だ。

 以前と比べて、牛肉の価格は値下がりし、激安を売りとするステーキ店が登場した。

 ステーキのファーストフード店「ペッパーランチ」などを展開する東証マザーズ上場のペッパフードサービスは13年12月、新業態「いきなり!ステーキ銀座4丁目店」を東京・銀座に開店した。立ち食いステーキ店という目新しい業態である。本格ステーキ・ハウス「ステーキくに 赤坂店」で好評の「特製リブロースステーキ」を半額で提供する激安店だ。ランチタイムには、300グラムのステーキセットが1000円で食べられる。

 高級な本格ステーキレストラン「銀座4丁目スエヒロ」が銀座から姿を消すのと入れ替わるように、激安の立ち食いステーキ専門店が開店した。銀座でひっそりと、業界の世代交代を象徴するかのような動きが進んでいる。
(文=編集部)

BusinessJournal編集部

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