野村総研、強制わいせつ裁判で組織的脅迫行為認定の実質敗訴 控訴も棄却で最高裁へ
シンクタンクの野村総合研究所(以下、野村総研)の中国・北京社副社長に相当する幹部Y氏が、2008年1月に上海で取引先の日本人女性営業担当者に強制わいせつ行為を働いたとされる、いわゆる「野村総研強制わいせつ事件」。同事件は、Y氏が取引候補先の日本人女性社員を会社のメールで誘い出し、酒を盛んに飲ませて酔わせ、帰路に就く女性のタクシーに乗り込んできて体に触り、さらに女性が一人暮らしの家に着くと、その自宅に上がりこんで強制わいせつ行為を行ったというものだ。
この事実を通知された野村総研は、被害者側に「Y氏は恋愛だと思ってやった」と主張してY氏になんの処分もしないことを決定し、さらにY氏を被害者女性たちの近辺に配置しない要求についても拒絶。野村総研人事部のT氏は、被害者女性側に脅迫的な対応を実施し、さらに同社やY氏は「裁判にすれば法廷に友人を呼び出してやる」などと脅迫する発言を、弁護士を使って行っていた。
Y氏のわいせつ行為の被害は、中国のミスコンテストでミスとなった女子大生や、日本航空や中国東方航空の上海基地の客室乗務員、他の取引先等の日本人女性社員など多数に広がっていることがすでに判明している。Y氏はミスコンテスト主催企業社長に「野村総研出資先のアイビジョン社がミスコンテストのスポンサーとなる。無償でミスコンテストのサイトを制作する」などと言って、さらにミスの女子大生にわいせつ行為を行っていた経緯まで発覚。被害者女性たちの支援者は、これを背任未遂の疑いもあるとして野村総研に通知した。
これを受け野村総研は、「性犯罪被害を告発されたのは名誉棄損だ」として、この支援者を民事で提訴。さらに、その告発と無関係の被害者女性を提訴し、1000万円の賠償を求めた。しかし、裁判で野村総研は名誉棄損を立証できず、和解もできずに訴えを取り下げ、実質上の全面敗訴となった。
さらに支援者に対して東京地裁へ提訴した結果、「野村総研の幹部のわいせつ行為、そして野村総研人事部のT氏らや、代理人弁護士らによる被害者女性側への脅迫行為は真実の通りであり、名誉棄損にならない」と事実認定する判決が下っている。しかしこの裁判では、野村総研による性犯罪被害者女性たちの被害について、支援者は被害者保護のために個人情報を開示せず、裁判所が必要だと判断されるなら開示命令を行うよう求めていた。これに対し裁判所は開示命令を出さずにいたが、判決では証拠が出されていないとして、野村総研の主張を一部認めるという判決となっていた。そのため、野村総研が9割の訴訟費用を負担するという実質上敗訴とする内容ではあったものの、支援者は「法人の名誉棄損主張を悪用した、性犯罪や脅迫の隠ぺいが許されてしまう」として、東京高裁に控訴した。
一方、野村総研は、幹部のわいせつ行為や、その隠ぺいのための組織的脅迫行為が事実認定された判決を受け、この認定の取り消しを求めて控訴した(ちなみに、本裁判後、警視庁池袋署がY氏を強制わいせつ未遂罪容疑で捜査し、送検していた事実が明らかとなっている。詳細は4月27日付当サイト記事『野村総研、わいせつ裁判敗訴後も、被害女性へ嫌がらせ行為継続、警視庁は指導へ』参照)