野村総研、強制わいせつ裁判で組織的脅迫行為認定の実質敗訴 控訴も棄却で最高裁へ
●双方控訴棄却で支援者が上告
そしてその控訴審で2月、東京高裁民事2部の佐久間邦夫裁判長は判決において「野村総研幹部Y氏のわいせつ行為、その隠ぺいのための野村総研による被害者女性への組織的脅迫行為は真実の通りであり、名誉棄損にならない」と認定した。その上で、野村総研幹部による他の性犯罪被害については、証拠が出されていないとし、双方控訴棄却となった。
また、野村総研は「法人として精神的苦痛を受けた」として被害者女性や支援者に対し1000万円の損害賠償を請求していたが、法曹会や世論からの批判の高まりを受け、インターネット上で事件関連情報を監視するために発生した実損だと主張を切り替えていた。これについて同判決は「具体的な損害額を裏付ける的確な証拠は無く、野村総研の主張は理由がないと言わざるを得ない」とした。野村総研は高額な弁護士費用を使い行ってきた裁判の正当性が崩れたことになるため、株主から資金の使い方などについて批判が集まる可能性もある。この判決を受け支援者は、「野村総研の主張がたとえごく一部でも認められては、社会に悪影響を与えてしまう」として最高裁判所に上告した。
野村総研はこれまでも筆者の取材に対して「当社社員がそのような犯罪行為にかかわった事実はありません」と回答しているが、最高裁がどのような判断を下すのか、今後の動きに注目が集まっている。
(文=新田 龍/株式会社ヴィベアータ代表取締役、ブラック企業アナリスト)●新田 龍(にった・りょう):株式会社ヴィベアータ代表取締役、ブラック企業アナリスト。
早稲田大学卒業後、「ブラック企業ランキング」ワースト企業2社で事業企画、人事戦略、採用コンサルティング、キャリア支援に従事。現在はブラック企業や労働問題に関するコメンテーター、講演、執筆を展開。首都圏各大学でもキャリア正課講座を担当。