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道後温泉、地元組合が新ホテルの湯利用を拒否 リゾート開発は観光地にとって本当に脅威か?

文=ライトフォーワン
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 近年、星野リゾート、大江戸温泉物語、湯快リゾートなど全国規模でリゾート開発を行う企業が手掛ける施設に注目が集まっている。独自のコンセプトで建築する施設だけでなく、経営難に陥った施設を買い取り、リノベーションして新たな価値を生み出すことで、国内外の観光客の需要を喚起してきた。

 ただ、このような大規模資本によるリゾート開発が観光地の地元に受け入れられているかというと、必ずしもそうとはいえない場合も多い。例としては、ホテル・旅館、土産店が立ち並ぶ温泉街などがわかりやすいが、観光地は地元の事業者同士が支え合って盛り上げてきたという強い仲間意識とプライドがあり、外からの参入に対して厳しい眼差しを向けるケースは少なくない。

 加えて、中小規模で経営している地元事業者にとって、リゾート開発企業が潤沢な資本で魅力的な施設を展開してくれば、観光客を奪われ大きな打撃となる可能性がある。リゾート開発企業は“脅威”である場合が多いのだ。「地元のことを知らないで勝手にやってきて、客を横取りしていく企業を受け入れるわけにはいかない」というのが、リゾート開発企業に対して多くの地元事業者が抱くイメージなのかもしれない。

●道後、新規オープンのホテルに温泉使わせず

 リゾート開発企業の観光地参入の難しさは、具体的なエピソードにも表れている。湯快リゾートは、今年7月に愛媛県松山市の道後で「つかさビューホテル」をリノベーションし、同社としては四国初となる施設をオープンさせた。しかし、3月11日付朝日新聞デジタル記事『道後にホテル進出、でも湯は別の温泉から…どうして?』によると、この施設のオープンに当たっては地元事業者組合である道後温泉旅館協同組合が湯快リゾートの参入に対して難色を示し、道後温泉の源泉使用に必要な組合の同意を得られていないというのだ。その結果、湯快リゾートは道後温泉から離れた鈍川温泉の湯をタンクローリーで運搬して使用せざるを得ない状況になっている。

 こうした事態の背景には、道後温泉組合が地元事業者によるエコシステムを守りたいという強い思いがあることは容易に理解できる。その一方で、湯快リゾートのようなリゾート開発企業の目的は、温泉地の地元経済を破壊して利益を独占することではない。

 今回の例についていえば、湯快リゾートが道後に地元のホテルや旅館を買い取るかたちで参入するのには、それなりの理由がある。それは、日本が世界に誇る観光地を活性化し、衰退しつつある観光需要の喚起や、海外に開かれた新たな観光地の創出を推進したいという地域振興の狙いだ。

●リゾート開発企業の参入で、地域活性化の例も

 当たり前の話だが、観光地はひとつのホテルや旅館だけで成り立つわけではなく、多くの事業者や観光協会が支えあうエコシステムがなければならない。そして、多くの観光客を集めるためには、営業力も欠かせない要素だ。リゾート開発企業が地元事業者と協力して観光地全体の価値を高めることができれば、そこに自社の営業力で多くの観光客を呼び込み、地元経済全体を活性化させ、地元事業者にも利益をもたらすことになる。

 実際に、リゾート開発企業が参入した観光地では、地元の商店街や観光施設が活性化しているケースも多い。観光地が注目されることで他の宿泊施設にも客が増えるなど波及効果もある。また、地域の活性化によって新たな地元雇用も生まれている。リゾート開発企業が大規模な予算を投じて、旅行会社や交通機関など他の企業を巻き込んだ観光振興キャンペーンなどの展開も生まれており、相乗効果は決して小さいものではない。

 もちろん、リゾート開発企業には地元の魅力や地元事業者の意向を積極的に聞き、誠意を持ってパートナーシップを築いていく姿勢が求められる。リゾート開発企業の資金力や集客力と、地元事業者の持つ知見と“地元愛”が良好なかたちでタッグを組むことができれば、日本の観光地はもっと面白くなるに違いない。
(文=ライトフォーワン)

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