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三陽商会、バーバリーに代わる収益柱みえず ファンドや大株主による買収観測も浮上

文=編集部
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三陽商会、バーバリーに代わる収益柱みえず ファンドや大株主による買収観測も浮上の画像1バーバリー・ブラックレーベル渋谷店(「Wikipedia」より/Wideangle)
 5月、三陽商会は英バーバリーと結んでいた高級ブランド「バーバリー」のライセンス契約を、2015年6月に終了すると発表した。派生ブランドの紳士服「バーバリー・ブラックレーベル」と婦人服「バーバリー・ブルーレーベル」は15年7月以降から、「バーバリー」の名前を使えなくなる。英バーバリーは三陽商会とのライセンス契約終了後、日本国内の直営14店と、譲渡を受ける子供服の50店を加えた64の直営店で本格展開する。

 戦後、「サンヨーレインコート」からスタートしてアパレルメーカーに変身した三陽商会は、バーバリーとともに成長してきたといっても過言ではない。ライセンス製造した「バーバーリー・ロンドン」は重厚なイメージで高価だったため、日本の若い世代にはあまり受け入れられなかった。しかし、1996年に立ち上げた若い女性向けのバーバリー・ブルーレーベルは人気歌手の安室奈美恵が愛用したことから大ブレイク。98年には若者向けのバーバリー・ブラックレーベルを展開し、両ブランドが三陽商会の成長の原動力となった。

 三陽商会がバーバリーブランドを失うことの影響は甚大だ。三陽商会のバーバリー事業の業績は開示されていないが、派生ブランドを含めると13年12月期の同社の売上高1063億円の過半、本業の儲けを示す営業利益70億円の大半を稼ぎ出したとみられている。契約が終了する15年12月期の業績については、売上高は960億円、営業利益は2億円。年間を通してバーバリーの売り上げがなくなる16年12月期は売上高850億円、営業損益は20億円の赤字に転落すると同社はみている。

 バーバリーが日本に直営店を出した09年当時から、アパレル業界では「三陽商会との契約を終了するだろう」との予想が広がっていた。ライセンス契約の継続が危ぶまれていた数年前から、三陽商会は落ち込みに歯止めをかける準備をしてきたはずだ。だが、英「マッキントッシュ」や米「ポール・スチュアート」、自社ブランドの「エポカ」とも十分な成果が出ておらず、落ち込みを埋める援軍になりそうもない。

●流れる買収観測

 ライセンス契約の終了を発表して以降、三陽商会の株価は急落した。4月1日に年初来高値の310円をつけていたが、5月20日に年初来安値の210円にまで下落。その後も220円前後で膠着状態だ。高値から30%以上株価が下がれば、買い集めた株式をまとめて転売することを狙った投資ファンドによるM&A(合併・買収)の標的になりやすい。それを避けるために、大株主が動くとの観測がある。

 三陽商会の大株主名簿を見ると、三菱商事が446万株(発行済み株数の3.5%を保有)、三越伊勢丹が416万株(3.2%)、三菱東京UFJ銀行が360万株(2.8%)を保有している。三菱商事、三菱東京UFJ銀行は三菱グループの御三家の2社である。三菱グループか三越伊勢丹に代表される大手百貨店が三陽商会を買収するのではないかという観測も流れている。

 そんな三陽商会は起死回生策の一環として、設立70周年を迎えたことを機に策定したコンセプト「TIMELESS WORK.ほんとうにいいものをつくろう。」に基づき、元プロ野球選手・長嶋茂雄氏のために仕立てたスーツを復元する。シングル2つ釦、センターベンツが特徴の33年前に制作されたスーツが7月に公開される。このスーツは、現役引退後の長嶋氏のために同社が制作したもので、保管庫から33年前のスーツの型紙が見つかり復元を決めた。

 三陽商会は1970年に英バーバリーとライセンス契約を結び、75年に長嶋氏をバーバリースーツのCMに起用した。英国の高級ブランドが日本人の間でこれだけ普及したのは、国民的大スターである長嶋氏のCM効果が大きかったからだといわれている。

 そんな“長嶋スーツ”の復元には、三陽商会のバーバリーとの決別の意味が込められているのかもしれない。
(文=編集部)

BusinessJournal編集部

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