5月にバッグ類中心のブランド品買取サイト「uttoku by GREE」を開設したのを手始めに、6月に会員型ホテル当日予約アプリ「Tonight」、7月に台所、浴室など住宅設備の定額制リフォームサイト「いえプラス」を開設した。さらに、8月に入ると12日に介護施設の検索サイト「介護のほんね」、13日に訪問型保育マッチングサイト「スマートシッター」を相次ぎ開設している。また、Tonightには8月からカップル向けホテルの当日予約アプリ「Tonight for Two」(すでに終了)を追加している。同社関係者は「年内にあと5~6件の新事業開始を予定している」と明かす。
こうしたグリーの新事業展開について、インターネット業界関係者からは「よくいえば保育から介護、宿泊までと多彩だが、新事業間の相乗効果は薄く、本業のソーシャルゲームとの関連性は不明」との声も聞こえてくる。
新事業ラッシュの背景には、グリーの業績不振がある。同社が今月13日に発表した2014年6月期連結決算は、売上高が前期比17.5%減の1255億円、営業利益が同28.0%減の350億円、最終利益が同23.0%減の173億円で、2期連続の減収減益。15年6月期第1四半期(14年7-9月)も前期比減収減益が続く見通し。このため、同社は今期(15年6月期)の通期見通しを示さなかったが、「赤字転落が濃厚」と予測する証券アナリストが少なくない。
前期は1年間で約40本の新作ゲームを開発したもののヒット作は出ず、人気があった既存ゲームも飽きられ、ユーザ離れが進んだ。グリーは「ゲーム事業はヒット作の有無で業績が大きくぶれる。こうしたばくち的な事業体質から抜け出すためにゲーム以外の事業育成が不可欠になった」と説明している。
●ソーシャルゲーム大手の必勝パターン
12年に社会問題化した「コンプガチャ問題」でつまずくまで、『探検ドリランド』をはじめとする数々の人気ゲームを量産していたグリーから、なぜ急にヒット作が出なくなったのだろうか。
ゲーム業界関係者は「携帯電話向けソーシャルゲームで急成長した同社は、その成功体験にこだわり、スマートフォン(スマホ)向け対応が遅れたためだ」と、次のように説明する。
携帯電話の普及を背景としてソーシャルゲーム市場が形成されたのは、08年から09年だった。そこへいち早く進出し、成功を収めたグリー、ディー・エヌ・エーなどソーシャルゲーム大手には必勝パターンがあつた。
ニーズを発見したら3週間程度で試作品レベルの自社オリジナルゲームを開発し、迅速に市場投入する。そして、ユーザの反応を見ながら修正を繰り返し、完成度の高いゲームに仕上げてゆく。そうしてヒット作にしたら、今度はそのヒット作を「ガンダム」「ワンピース」など他社の既存人気コンテンツのゲームにアレンジし、次々と「新作」として売り出す。ゲームの仕組みは同じでも、それを多種多様なコンテンツ上に展開することで「多種多様なユーザ」をゲームに取り込めるというわけだ。