食べログ、圧倒的強さの秘密?やらせ騒動を、管理体制徹底やレビュアーとのオフ会で克服
右肩上がりに急成長を遂げていた食べログだったが、12年に再び大きな逆境が訪れる。不正業者による「やらせ口コミ」問題である。お店の評価を上げるため、お店の依頼を受けた業者がお客になりすまして口コミを書いていたのだ。口コミの信頼性が評価されて伸びてきた食べログにとっては、サイトの信頼性が疑われてしまう出来事だった。
しかし、マスコミが報道していた内容と現実は違ったようだ。当時から、不正な書き込みをしても、お店の評価点数を操作することは困難だったという。過熱した報道により、評価を簡単に操作できるかのような勘違いも生まれていた。
食べログでは、口コミの信頼性を維持・強化するために、信頼できるレビュアーとそうでないレビュアーを早期に判別できるようにシステムとアルゴリズムを強化しており、さらに、お店に業者が来たら通報してもらうようにすることで、やらせ口コミ業者を一掃した。また、これはほとんど知られていないことだが、食べログに書き込まれた口コミは、社内数十人体制ですべてチェックしているのだ。
不自然な書き込みや誹謗中傷、不適切な表現のある書き込みを発見すると、一旦サイト上では非表示にし、書き込んだレビュアーに書き直しのお願いをしているという。1日3000件程度の口コミが書き込まれるが、この地道な積み重ねで、口コミ総数は国内最大の約600万件に積み上がり、食べログの信用を担保し続けている。
●次はネット予約に注力
高度に組まれたアルゴリズムや社内のチェック体制を敷いているが、村上氏は自ら信頼性維持のために厳しい目を向けている。
村上氏は、レビュアーに個別に声がけして定期的にオフ会を開き、自らも参加している。そのオフ会は、すでに47都道府県で開催したという。役員の村上氏をはじめとして本部長、社員も平日だけではなく、週末も利用して参加している。オフ会では、ユーザーならではのアイデアを聞くこともでき、加えて地元の情報も得られるため、食べログのサービス改善に役立っているという。
当初からユーザー重視の姿勢を貫き、立ち上げから丸4年間は収益のことは考えなかったという。サイトパワーが拡大していくに従って収入源も増え、次第にビジネスモデルを整えていった。
現在の食べログの収入源は、サイト内の広告収入だけでなく、有料店舗会員と有料個人会員からの課金収入である。14年6月時点で、有料店舗会員が3万6000店、また、同9月には、有料個人会員が45万人を突破した。スマートフォンアプリにも力を入れており、現在100万ダウンロードを超えて伸び続けている。また、カード決済サービス「食べログPay」も5月から提供を始めている。
カカクコムの連結売上高の業務別売上構成では食べログの比率が34.3%と最も多く(15年3月期第1四半期)、今やカカクコムを牽引する存在となった。
たった一人で立ち上げ、幾度の逆境を乗り越えてきた村上氏は、現在200名の部下を擁し、次の新しいステージをすでに見据えている。
「現在、ネット予約に力を入れています。20年の東京オリンピックに向けて、外国人でもネットで簡単に予約が取れるようにならなければなりません。お店を探してから予約を入れるまで、ワンストップでできるサイトを提供していきたいのです」(村上氏)
食べログのネット予約サービスは13年1月に本格稼働を開始し、14年10月現在では、前年同月比で4倍超となる全国約8300店が参加、累計予約人数も100万人を突破した。
ホテルや航空券など他の予約サービスに比べて、飲食店はEC化がこれから期待できる業界である。村上氏は、予約サービスでも日本一を目指しているといい、グルメサイトへの情熱はさらに増しているようだ。
(文=鈴木領一/ビジネス・コーチ、ビジネス・プロデューサー)
取材協力:村上 敦浩(むらかみ・あつひろ)
カカクコム取締役 食べログ・新規事業担当 1975年生まれ 慶應義塾大学経済学部卒業後、アクセンチュアにて、主にCRM・SFA領域のコンサルティングに従事。2004年、カカクコムへ入社。約半年でグルメサイト「食べログ」を立ち上げ(05年3月)、現在では月間約6000万人が利用するまでに成長。事業面では、個人向け有料サービス、飲食店向け有料サービス、オンライン予約サービス、広告、データ販売など多様なビジネスモデルを展開し拡大中。新規事業創出にも尽力。13年5月より現職。