ドコモは10月31日、2015年3月期連結業績予想の下方修正を発表。売上高に当たる営業収益は前期比1.4%減の4兆4000億円、営業利益は23.1%減の6300億円、最終利益は9.6%減の4200億円の見通しとなった。特に営業利益は期初予想の7500億円を1200億円も引き下げ、これが確定すれば営業利益は00年3月期(5457億円)以来の低水準となり、業界3位に転落する。
不振の主因は今年6月から導入した新料金プランの空振り。昨秋、懸案だった米アップルのスマートフォン(スマホ)iPhone販売に参入し、他社への契約者流出の最大要因を解消したかにみえた。6月からは新料金プラン「カケホーダイ&パケあえる」を導入し、14年度は「iPhone効果」をフルに発揮できるはずだった。しかし、新料金プランはデータ通信の多いスマホ中核ユーザにソッポを向かれ、他社への契約者流出も依然止まらない。同日記者会見した加藤薫社長も「新料金プランの影響で減益幅が拡大した」と誤算を認めたが、何がドコモの起死回生策を空振りさせたのだろうか。
●中核ユーザには割高な料金体系
ドコモが新料金プラン導入に踏み切ったそもそもの動機は、iPhone以外のスマホ不振であり、従来型携帯電話(ガラケー)からスマホへの移行が同社の計画を大きく下回ったのが主因。
今年4月25日に発表した14年3月期連結決算の営業利益は、前期比2.1%減の8192億円、2期連続の営業減益だった。昨秋のiPhone投入効果で同年下期の契約者純増数は前年同期比80%増に急伸し、この影響で通期ベースでもスマホ契約者数は前期比30%増の2435万件に達した。ところが、アンドロイドOSのスマホ契約者数がiPhone投入の煽りで計画を大幅に下回り、1620万台を目指していたスマホ全体の販売台数は前期比4%増の1378万台にとどまった。
そこでドコモは「ガラケーからスマホへの移行が計画通り進まなかったのは、スマホの月額料金の高さが原因。月額料金を下げればスマホの販売ハードルも下がり、ガラケーとの2台利用もしやすくなると考えた」(通信業界関係者)。そのため今年4月10日、同社は6月1日からの新料金プラン導入を発表。狙いは「音声通話収入が無料通話アプリ普及の影響もあって下げ止まらない。そこで定額制の導入で音声通話収入の減少に歯止めをかける一方、従量制のデータ通信収入を収益の柱にしよう」(同)というものだった。その結果、新料金プランは定額制の音声通話と従量制のデータ通信を組み合わせた料金体系となった。この料金体系はスマホでの通話は月額2700円で時間も回数も無制限となるが、データ通信は従量制という内容で、音声通話量が多くデータ通信量が少ないユーザにとっては旧料金プランより割安となり、逆のユーザにとっては割高となる仕組み。ここに落とし穴があった。