人気の高まりは数字にも如実に表れている。3月10日付日本食糧新聞によれば、2013年のグラノーラ生産数量は、1万8802tで前年比53.4%増、出荷金額は146億円で同55.2%増となり、14年も2桁増が見込まれているという。
朝活促進のためにオフィスで朝食無料提供
そんなグラノーラを企業がオフィスで社員へ無料提供するという取り組みを、シリアル市場のトップブランド「フルグラ」を販売するカルビーが支援している。この取り組みを導入しているのは、ショッピングサイト「LOHACO」を運営するアスクル、インターネット広告代理店のオプト、映像・ゲームコンテンツ制作会社のバンダイビジュアル、駒澤大学だ。カルビーはフルグラを無料で提供し、企業3社は無料で社員に提供し、駒澤大学は「100円朝食」のメニューに加えている。オプトの担当者は、次のように導入の経緯を説明する。
「従業員満足度の向上を目指す『いい会社プロジェクト』を発足させたのですが、その一環として残業を減らし、生産性の高い朝に業務を行う『朝活』を推奨していました。そこで朝食を抜きがちな社員の健康促進も兼ね、パンを無料提供するサービスを実施していたのです。すると、この取り組みをカルビーさんが把握され、フルグラの提供を提案していただきました」
オプトではカフェコーナーにフルグラのサーバーを設置し、社員が自由に食べられるようになっている。評判は上々のようで、30代の女性社員は「初めてフルグラを会社で食べましたが、とても美味しいですね」と喜び、男性の新入社員も「1人暮らしで朝食は抜いていましたけど、これで毎朝、きちんと食べられるようになりました」と話す。
20~30代男性への浸透狙う
カルビー、フルグラ部・商品企画課長の網干弓子氏はこの取り組みを始めた背景について、次のように説明する。
「フルグラの販売を通じ、弊社は日本の朝食について真剣に考えてきました。より多くの人に朝食を食べてもらいたい、そのためにフルグラを活用してもらおうというお試し期間の要素も含んだ取り組みと位置づけています。例えば厚生労働省の調査では、20~30代の朝食欠食率が高いという結果が出ています。朝食をしっかり取るのは大切なことですから、弊社の取り組みが皆さんの朝食のあり方に役立てば、これほどうれしいことはありません」
特に20~30代の「男性」にフルグラを食べてもらいたいという考えが、カルビーにあるという。
「フルグラの発売開始は1991年です。当初は『フルーツグラノーラ』という商品名でしたが、弊社の商品でもかなりのロングセラー商品になっています。2000年代までは基本的に20代の女性がメインの購買層でした。手軽に朝食が取れる利便性が評価されていたのですが、主婦層などからはシリアルといえばひと括りに『ちゃんとした朝食ではない』というイメージも持たれていたのです。そこで2011年ごろからマーケティングを見直し、『フルグラは美味しくて、健康的な食品』『ヨーグルトをかけたり、サラダに加えたり、ちゃんとした朝食の一品としても使える』ということをアピールするようにしました。いわば主婦の方々がフルグラに抱く『手抜き』という罪悪感を払拭しようとしたのです。結果、フルグラの購入層は30~40代の主婦がメインになり、同じ30~40代の夫、つまり男性も朝食にグラノーラを食べる層が増えてきました。今後はまだ開拓の余地の大きい20~30代男性への浸透にも力を入れていきます」
厚労省の調査では、20代男性の約29.9%が朝食を取らないことが明らかになっており、これは男女全世代の中でトップだ。カルビーにとっては、オフィスで20代の男性社員にフルグラを食べてもらうというのは「新規顧客の開拓」という意味合いも持つことはいうまでもない。実際、オプトに勤務する20代の男性社員は「フルグラは知っていたが、食べたことはなかった。今回初めて食べて美味しかったので、買おうと思っている」と話す。
「弊社は小売店に商品を置いてもらうのが基本ですが、フルグラに関しては外食産業との連携を強めています。ファミリーレストランやコンビニエンスストアで商品化されれば、それだけ20代男性の目にも留まることになります。またシルバー層への浸透を考えており、牛乳宅配でのセット販売もスタートさせました」(網干氏)
グラノーラ市場拡大の勢いは、しばらく続きそうだ。
(文=編集部)