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安部徹也「MBA的ビジネス実践塾」第16回

ドーナツ戦争仕掛けたセブンの脅威 ミスドの戦略は?コーヒー戦争で惨敗のマックの蹉跌

文=安部徹也/MBA Solution代表取締役CEO

 ただ、いかにドーナツ市場で支配的なリーダーの地位にあるミスタードーナツにとっても、相手がコンビニ業界のリーダーで飛ぶ鳥を落とす勢いのセブンでは脅威を感じざるを得ないだろう。店舗の規模でみれば、ミスタードーナツの1350店(14年3月末現在)に対してセブンは10倍以上の1万7177店(同11月末現在)。売り上げに至っては1030億円に対して3兆8000億円と実に38倍もの開きがあるのだ。

 セブンは、自社の強みである規模の大きさをフル活用してドーナツを大量生産することで、コストを抑えることも可能になり、低価格を武器に市場を切り崩すこともできるだろう。実際にセブンのドーナツ販売価格は、6種類のうち5種類が100円、そして1種類が130円と、ミスタードーナツの同様の商品よりも若干安い価格設定で、顧客を奪おうという戦略が見て取れる。

 新製品を市場に投入する際には早期に利益を上げるために相対的に高い価格を設定するスキミング・プライシングと、早期に高いマーケットシェアの獲得を図るために相対的に安い価格を設定するペネトレーション・プライシングがあるが、セブンは後者を選択し、一気に業界でのポジションを固めていこうという作戦なのだ。

 セブンの発表では、発売初年度に4億個、翌年度は6億個の販売を目指すとのことなので、もし計画が達成されれば、その売上高は最低でも600億円に達し、わずか2年で現在のドーナツ市場の半分以上を超える計算になる。もし、このセブンのドーナツ売り上げがすべて既存のドーナツ市場から奪ったものとすると、ミスタードーナツの売り上げは400億円から500億円程度へ急減する計算となる。つまり、この2年のうちにセブンが600億円の売り上げで業界首位に躍り出る一方で、ミスタードーナツは2位に転落することになるのだ。

 もちろん、セブンはミスタードーナツが出店していない地域にまで出店しているため、ドーナツの売り上げのすべてを競合店から奪うわけではないが、これまで無風地帯といっても過言ではなかったドーナツ市場に大きな変動が起こることは間違いないだろう。

●迎え撃つミスタードーナツの取るべき戦略

 では、セブンを迎え撃つ側のミスタードーナツは、どのような戦略で対抗すべきだろうか。

 もちろん、価格をセブンと同等にして真正面から対抗することもできるが、安易な値下げはこれまで築いてきたブランド価値の毀損につながるし、収益悪化に直結するので得策とはいえないだろう。コーヒー戦争の際には同じ価格でも敗れ去ったマクドナルドの前例があるだけに、同じ轍は踏みたくないはずだ。

安部徹也

安部徹也

株式会社 MBA Solution代表取締役CEO。1990年、九州大学経済学部経営学科卒業後、現・三井住友銀行赤坂支店入行。97年、銀行を退職しアメリカへ留学。インターナショナルビジネスで全米No.1スクールであるThunderbirdにてMBAを取得。MBAとして成績優秀者のみが加入を許可される組織、ベータ・ガンマ・シグマ会員。2001年、ビジネススクール卒業後、米国人パートナーと経営コンサルティング事業を開始。MBA Solutionを設立し代表に就任。現在、本業にとどまらず、各種マスメディアへの出演、ビジネス書の執筆、講演など多方面で活躍中。主宰する『ビジネスパーソン最強化プロジェクト』には、2万5000人以上のビジネスパーソンが参加し、無料のメールマガジンを通してMBA理論を学んでいる。

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