楽天は昨年9月9日の買収発表記者会見で「楽天経済圏にイーベイツを加えることで、楽天市場は世界屈指の品揃えを目指す」と述べ、楽天市場のユーザがイーベイツ経由でアマゾン、イーベイなどが取り扱っている商品を購入しやすくする方針を示している。さらに三木谷氏は「20年をメドに、ネット通販流通総額の海外比率を50%に高めたい」と意欲を示した。
楽天の直近の実績である昨年7-9月の流通総額に占める海外比率は、わずか6.2%。10月のイーベイツ買収完了時点の同社流通総額を仮に積み上げてみても18.1%。20年をメドに海外比率50%を達成しようとすると、イーベイツ並みの流通規模を持つネット通販会社を、あと3~4社買収する必要がある。
一方、楽天ののれん代は、13年12月末時点で1422億円だった。それが昨年9月末時点では2451億円となり、1.7倍に膨らんだ。膨張分の大半がバイバー・メディア買収によるもの。今期通期決算ではイーベイツ買収分がれん代に反映されるので、この額はさらに膨らむ。前出アナリストは「海外比率50%に向けて買収を加速すると、5~6年後はのれん代が6000億円規模まで膨張する恐れがあり、その分、資産減損リスクが高まる」と指摘する。
●買収による相乗効果に疑問の声も
楽天は国際会計基準を採用しているので、のれん償却は不要だ。よって買収した会社の営業利益は連結決算に反映されるが、営業利益圧迫要因となるのれん代の償却は発生しないので、決算上は今後も営業増益が続く可能性が高い。
だが、国際会計基準では毎年のれん代の減損テストを実施しなければならず、買収した会社の業績が悪化すれば買収額の回収が危うくなるので、資産の減損処理をしなければならない。
「楽天の海外M&A戦略が同社のシナリオ通り成功すればなんの心配もないが、シナリオが狂った場合、同社はたちまち巨額の資産減損処理に追い込まれ、株価が暴落する危険もある」(前出アナリスト)
楽天の海外M&Aについてはかねてから、買収した会社の事業と楽天市場をどのような組み合わせで相乗させるのか、その具体策が不透明と指摘する株式市場関係者は多い。こうした課題に加え、減損リスクをどのようにして回避するのか。新たな課題を浮上させたのが、今回の好決算だったといえそうだ。
(文=福井晋/フリーライター)