なぜソフトバンクは「つながりやすさNo.1」になれた?ビッグデータのまやかし
最近、「ビッグデータ」という言葉を聞かない日はないというくらい、新聞、雑誌、セミナーはもちろん、テレビ番組でもビッグデータをテーマに取り上げている。企業もビッグデータの活用を検討しているところが多いことだろう。
ところが、「ビッグデータに乗り遅れるな」とばかりに会社上層部から脅され、とりあえずベンダ(大手IT企業)の言いなりになって設備投資をしたものの、いまひとつ成果が出ずに困っている担当者も少なくない。
21世紀に入り、IT技術の進歩により、データ利用に関する次の5つのプロセス・コストが格段に低下したことは確かだ。
(1)データの収集
(2)データの送信
(3)データの分析
(4)データの保存
(5)データの表示
その結果、大量のデータを扱うことが誰にとっても経済的かつ現実的になり、その点を強調すれば「ビッグ」データであることに間違いはない。
しかし、ビッグデータを導入しても成果が出ないのは、皮肉なことにビッグデータの「ビッグ」という部分だけに着目しているからだろう。大量のデータというのは玉石混交だから、そもそも役に立たないデータも多い。闇雲にデータを集めても、ほとんどはノイズの塊といってよい。その中から真に重要な情報を抽出するのは意外と難しい。
ビッグデータというのは、データ量の多さだけが特徴なのではない。旬なデータを遠隔地からでも安価でかつ正確に、そして継続的に収集できるという特徴こそ重要なのだ。その点にフォーカスすれば、最初からデータの収集範囲を絞り込み、量的には「スモール」でも「スマート」なデータのほうが十分活用できるといってよい。つまり、「下手なビッグデータ」よりも「賢いスモールデータ」こそ企業が目指すべきものだ。
ソフトバンクのケース
ビッグデータという言葉には、なるべく多く関連商品・サービスを売りたいというベンダ側の期待が入っている。ビジネスであるから、それは致し方ないであろう。実際、アマゾンやグーグルのように大量のデータを上手に分析して成果を上げている企業もある。しかし、そうした企業ですら、データ分析の視点をまず明確に絞り込んでからデータ収集を行っているはずだ。
たとえばソフトバンクは、2013年秋頃から「つながりやすさNo.1」を堂々とCMで宣伝するようになった。数年前まで、他社ではアンテナ3本立つ場所でもソフトバンクは「圏外」ということが多かったのに、なぜソフトバンクはその問題を解消できたのだろうか。