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片田珠美「精神科女医のたわごと」

神田うの、想像力欠如か…大量のブランド靴を動画で自慢、夫経営のパチンコ店では給料減額

文=片田珠美/精神科医
神田うの、想像力欠如か…大量のブランド靴を動画で自慢、夫経営のパチンコ店では給料減額の画像1
神田うのが自身のYouTubeチャンネル「うのちゃんネル」に投稿した動画「神田うのが持っているルブタンの靴を全てお見せします!!」

 タレントの神田うのさんがセレブな暮らしぶりを連日のようにSNSに投稿していることに対して、夫の西村拓郎氏が社長を務める大手パチンコチェーン「エスパス日拓」の若手社員が“恨み節” を漏らしていると週刊誌「FLASH」(6月16日号/光文社)で報じられた。

 「エスパス日拓」の店舗は、新型コロナウイルス感染拡大に伴う休業要請に応じ、4月8日から全店一斉休業に入っていたが(5月29日に営業再開)、その最中に、うのさんがSNSでセレブな暮らしぶりを披露したからだ。

 店舗休業中の社員の給料は、60%まで減額され、「実際の手取りは、コロナ禍以前の給料の40%程度。20代の社員なら、10万円かそこらですよ」と訴える20代社員もいるという。この社員は「休業前日に、店舗幹部から『今年の夏のボーナスは出ないからね』と言われました」とも話している。“ボーナスゼロ” について、日拓グループは「そのような事実はございません」と否定しているが、少なくとも、社員の収入が激減したのは事実だろう。

 このような社員の苦境に、うのさんは社長夫人でありながら想像力を働かせることができないようだ。いや、むしろ考えてみようとさえしないのではないか。何しろ、東大出身で旧通産省の技官だった父を持ち、何不自由なく大切に育てられたお嬢さまのうえ、子どもの頃から街を歩くたびに芸能事務所からスカウトされたほどの美貌の持ち主である。

 モデルとしてもタレントとしても売れっ子になり、ストッキング、ウェディングドレス、ジュエリーなどの自己ブランドのプロデューサーとしても成功しているのだから、社員の苦境に思いが及ばないのは当然だろう。

 しかも、大富豪の夫を持つ典型的な“勝ち組”だということが、うのさんの強い特権意識に拍車をかけているように見える。こうした特権意識は「私は特別な人間だから、他人には許されないことでも私にだけは許される」という思い込みにつながりやすい。だからこそ、夫の会社の社員から“恨み節” が漏れようが、いくらバッシングされようが、あまり気にしないでいられるのかもしれない。

靴が帯びる意味合い

 うのさんは5月23日、高級婦人靴ブランド「クリスチャンルブタン」のきらびやかなコレクションを手に取って紹介している動画をYouTubeで公開した。最も高価なのは50万円くらいする「ゴーマル」という靴らしい。

 うのさんが高級ブランドの靴を好む理由はわからないが、世界の歴史を振り返ると、このような靴のコレクションにはまる女性は、1986年に夫であるフィリピンの故・マルコス大統領とともに宮殿を追われたイメルダ夫人をはじめとして、権力者や大富豪の妻に少なくない。

 これは、フロイトが夢分析の経験にもとづいて見抜いたように、「空洞があって中にものを入れることができるという性質を備えたすべての対象」は性愛的意味合いを帯びているからである。靴は、その典型ということになる。

 こうした視点から眺めれば、なぜ靴のコレクションにはまる女性がとくに権力者や大富豪の妻に多いのかという謎が解ける。もちろん、購入できるだけの財力があるからだろうが、それだけではない。やはり、「私は優れたものを持っているから、ここまでのし上がれたのよ」と誇示したい気持ちがあるように見受けられる。

 その点では、バッグのコレクションにはまる女性も同様である。そういう女性に、何十万円もするブランドバッグをプレゼントする男性がいるが、これは性愛的意味合いがバッグに秘められているからこそ成り立つ関係だろう。

「靴フェチ」=「レチフィズム」

 靴に秘められた性愛的意味合いを知れば、なぜ「靴フェチ」男が後を絶たないのか理解できる。女性の足にしがみつき靴を奪ったとか、高級クラブに忍び込みホステスのハイヒールを盗んだとか、「靴フェチ」男にまつわる事件は枚挙にいとまがない。

 やはり靴が男性の幻想をかき立てるからだろう。ある種の男性がハイヒールで踏まれたいという欲望を抱くのも、ホストが女性客のハイヒールに酒を注いで飲むのもそういうことだったのかと納得がいく。脱げた靴を手がかりにシンデレラを探す王子様のお話だって、実は性愛的な意味合いを帯びていることがわかる。

 「靴フェチ」の巨匠といえば、かのサド侯爵と同時代のフランスの作家、レチフ・ド・ラ・ブルトンヌ(1734年~1806年)だろう。レチフは女性の靴を眺め、その匂いをかぎ、接吻し、ときには自慰の道具として用いることに快感を覚えたという。レチフの名を冠し、「靴フェチ」に「レチフィズム」なる学名が与えられている。

 靴が帯びる性愛的意味合いを考えれば、大富豪の妻が膨大な靴のコレクションを自慢したくなる気持ちもわからないではない。だが、「靴フェチ」=「レチフィズム」の男性は多いので、盗まれないようにご用心を。

(文=片田珠美/精神科医)

参考文献

ジークムント・フロイト『精神分析入門(上)』 高橋 義孝 ・下坂 幸三訳 新潮文庫1977年

片田珠美/精神科医

片田珠美/精神科医

広島県生まれ。精神科医。大阪大学医学部卒業。京都大学大学院人間・環境学研究科博士課程修了。人間・環境学博士(京都大学)。フランス政府給費留学生としてパリ第8大学精神分析学部でラカン派の精神分析を学ぶ。DEA(専門研究課程修了証書)取得。パリ第8大学博士課程中退。京都大学非常勤講師(2003年度~2016年度)。精神科医として臨床に携わり、臨床経験にもとづいて、犯罪心理や心の病の構造を分析。社会問題にも目を向け、社会の根底に潜む構造的な問題を精神分析学的視点から分析。

Twitter:@tamamineko

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