お笑いコンビ「アンジャッシュ」の渡部建さんが複数の女性との不倫について事実関係を認めていると「文春オンライン」(6日10日配信/文藝春秋)で報じられた。渡部さんはすでに9日に民放各局にレギュラー番組の出演自粛を申し出ている。
渡部さんは2017年に美人女優の佐々木希さんと結婚しており、1歳の長男もいるため、「あんなきれいな奥さんがいてなぜ浮気するのか」という声が上がっているようだ。
しかし、たぐいまれな美貌の持ち主が周囲から称賛され、羨望の的になることは、1人の男性から愛され続けることとはまったく別物だろう。実際、いくら美人でも、男性から愛されず、なかなか幸せになれない女性も少なくない。
「美人は幸せになれない」というジンクスもある。このジンクスには、世の大多数の“不美人”の妬みやひがみ、さらには願望が入り交じっているように見えなくもない。それでも、過去の歴史を振り返ると、その美貌ゆえに男性の欲望に振り回されたり、陰謀に巻き込まれたりした女性がいることは否定しがたい。
美人妻を持ちながら不倫を繰り返す男性の特徴
美人妻を持ちながら、看護師や医局秘書などと不倫を繰り返す男性医師は少なくない。彼らを身近で観察していて、私は次の3つの特徴に気づいた。
1)女性を顔で選ぶ
2)女性を征服することに「狩り」のような快感を覚える
3)それだけモテる
1)女性を顔で選ぶということは、妻や恋人を一種のステータス・シンボルとみなす傾向が強いということである。もしかしたら、渡部さんにとって、15歳も年下の美人妻は、自身の成功の証であるトロフィー・ワイフだったのかもしれない。そういう男性は、外にもっときれいな女性がいたら、その女性に気持ちをそそられやすい。
2)女性を征服することに「狩り」のような快感を覚える男性からすれば、結婚した時点で「狩り」は終わる。当然、「釣った魚に餌はいらない」という心境になりやすく、今度は次の「狩り」に乗り出す可能性が高い。
美人と結婚できるのは、容姿にせよ、学歴にせよ、収入にせよ、3)それだけモテる要因を持っているからだろう。当然、周囲の女性が放っておかない。とくに渡部さんは容姿に恵まれているうえ、テレビにもよく出ている売れっ子芸人で、顔も名前も知られている。
しかも、不倫相手の女性からすれば、渡部さんを寝取ることで「あの美人女優の佐々木希に勝った」という勝利感を味わえる。だから、佐々木さんの夫であるということも、むしろ渡部さんがモテる要因になったかもしれない。
「サチリアージス」の可能性
見逃せないのは、渡部さんが複数の女性と不倫関係にあったことである。50歳を前にしてこれだけ“お盛ん”なのだから、「サチリアージス」の可能性も考えられる。
「サチリアージス」は、男性の性欲の異常亢進(こうしん)を指す医学用語であり、ギリシャ神話に登場する半人半獣のサテュロスに由来する。サテュロスは欲情に駆られてニンフの尻を追い回し、男性の象徴が常に興奮していたという。
「サチリアージス」の典型として、スペインの伝説的な放蕩(ほうとう)児、ドン・ファンが挙げられる。ドン・ファンは文学や芸術でしばしば取り上げられているが、たいてい非業の死を遂げることになっている。たとえば、モリエールの喜劇『ドン・ジュアン』では、「たとえ何が起ころうと、おれが後悔することなんかあるものか」という台詞を吐いたあと雷に打たれて死ぬし、モーツァルトのオペラ『ドン・ジョヴァンニ』でも、石像に手をつかまれ、地獄に引きずり込まれてしまう。
裏返せば、死ぬまで反省も後悔もしないということだろう。むしろ、精力絶倫であることが殿方の羨望の的になることもまれではない。しかも、必ずしも病気というわけでもないし、有効な治療法があるわけでもないので、「サチリアージス」は一生続くことが多い。
渡部さんは所属事務所を通じて「家族を深く傷つけ、また応援をしてくださる皆様に対し多大なご迷惑をおかけしたと大変反省しております。妻にも説明し、謝罪しました。誠に申し訳ありませんでした」というコメントを出したが、心から反省しているのか、はなはだ疑問である。
(文=片田珠美/精神科医)