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シリーズ〈映画・ドラマにおける“不幸の連鎖”を考える〉第2回

水谷豊、寺脇康文、高樹沙耶が共演NGになったワケ…『相棒』と『刑事貴族』の因縁とは

文=峯岸あゆみ
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水谷豊、寺脇康文、高樹沙耶が共演NGになったワケ…『相棒』と『刑事貴族』の因縁とはの画像1
『刑事貴族』は、1990年から1992年まで日本テレビ系列で放送された刑事ドラマ。記事中に出てくる田中実は中央のベージュのスーツの男性、団優太は右のGジャンの男性。(画像は、2013年にバップから発売された『刑事貴族2 DVD-BOX I』のジャケット)

 出演者、関係者に不幸な出来事や、不祥事などが⽴て続けに起こる映画やテレビドラマを「呪われた作品」などと呼ぶことがある。「呪われた」とはなんとも不謹慎な物言いだが、そうでも呼ばない限り、その作品に降りかかった「負の連鎖」を説明できないような、そうした作品というものが存在するのだ。このシリーズでは、そうした不幸、悲しみが連続した作品たちを取り上げてみたい。

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水谷豊が舘ひろし、郷ひろみのあとを継いだ刑事ドラマ

 68歳の現在も『相棒』season19(テレビ朝日系)に出演中の水谷豊は、『相棒』以前に、出演者に“不幸の連鎖”が続いた作品に主演していた過去がある。

『刑事貴族』は、1990年4月13日から1992年12月25日まで、日本テレビ系の毎週金曜20時から放送された刑事ドラマシリーズ3部作である。シリーズは一貫して警視庁「代官署」の刑事課を舞台にした内容で、第1作『刑事貴族』(以下、便宜上『刑事貴族1』)は、舘ひろし、黒木瞳、布施博、布川敏和、地井武男らが刑事を演じ、その上司役で松方弘樹が出演していた。

『刑事貴族1』は一定の視聴率を稼いでいたが、主役の舘が、所属先(当時)の石原プロが制作する新番組『代表取締役刑事』(テレビ朝日系)に同じく刑事役で出演することになり、開始4カ月で降板が決まる。そこで、制作者側は、主人公を殉職させ、翌週から同等の力量を持った後任刑事を赴任させるというという異例の措置を取った。舘ひろしに代わる『刑事貴族1』の新しい主演俳優は、郷ひろみだった。

 その後、本業が歌手である郷は半年程度で降板。それでもシリーズは終わらず、1991年4月よりタイトルを『刑事貴族2』と改め、舞台、設定はそのままに新たな主役を迎える。3代目の主人公を演じた俳優こそ水谷豊だった。『刑事貴族2』は、番組としてようやく安定し、以後1年間にわたって放送された。さらに1992年4月からは、一部出演者の入れ替えの上で『刑事貴族3』と改題され半年間続いた。

『刑事貴族2』『刑事貴族3』──本稿で取り上げたいのは、この2作品だ。

朝ドラ主演俳優の田中実、名女優の長男・団優太……若手刑事が2名がまさかの衝撃死

『刑事貴族』シリーズは、上述した主役の件以外にも、刑事役俳優の入れ替えがたびたびあった。黒木瞳が『刑事貴族1』の途中で降板、布施博、布川敏和は殉職なり異動なりの設定で『刑事貴族2』には出演せず。一方で、水谷の登場と同時に、同僚刑事役で2人の若手俳優がレギュラー入りしている。

 そのひとりは、それ以前に同じドラマ枠で放送されていた刑事ドラマ『ジャングル』に刑事役で出演、その後、1990年のNHK連続テレビ小説『凛凛と』に主演することで知名度を一気にアップさせた田中実だ。

 もうひとりは、往年の東宝女優・団令子の長男で、1990年に安田成美主演のいわゆる“トレンディドラマ”『キモチいい恋したい!』(フジテレビ系)でテレビドラマデビューをしていた若手俳優・団優太である。

 田中と団の両名は、『刑事貴族1』の途中から出演していた宍戸開と共に若手刑事トリオを形成し、番組に新風を吹かせていた。

 しかし、団の出番は短かった。第19話で、“本庁に異動”という設定で降板してしまうのだ。その後、団の俳優活動は順風満帆とはいかなかった。単発的なドラマ出演はあったものの、それもポツリポツリで、いつの間にかほとんど姿をみかけなくなっていた。1995年に歌舞伎俳優の中村獅童と「UNIT33」なるユニットを結成し音楽活動を展開したものの、これも長くは続かなかった。

 降板から14年後の2006年8月、人々に忘れられかけていた団優太に関する衝撃的なニュースが流れた。当時38歳の団が、マンションから飛び降り自ら命を断ったのである。その当時、「団が17歳年上の女性と結婚と離婚を繰り返していた」「団が起こした交通事故でその女性が身体に障がいを追った」「団がDVの加害者だった」「薬物に依存していた」……といった内容の報道もあった。いずれも、彼が精神的に不安定な状態だったことを想像させるものだった。

 団の死から約5年後の2011年4月に、『刑事貴族』ファンが耳を疑うような出来事が起こる。今度は、田中実が自宅マンションで首を吊って自殺するのだ。44歳だった田中は、団と異なり仕事も順調で、他界した際には『法医学教室の事件ファイル33』(テレビ朝日系)の撮影途中だった。私生活では結婚し、2人の子どももいた。彼の自殺理由については明らかになっていない。

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「相棒」で共演する寺脇康文、高樹沙耶も同僚刑事としてレギュラー出演している。(画像は、2008年にバップから発売された『刑事貴族3 DVD-BOX』のジャケット))

黒木瞳の後任刑事女優、高樹沙耶が私生活で逮捕される

刑事貴族2』『刑事貴族3』の負の連鎖はまだ続く。『刑事貴族1』の途中で降板した黒木瞳の後任として登場し、『刑事貴族2』『刑事貴族3』にも引き続き出演(未出演期間あり)した女優が、後に逮捕・起訴され、有罪判決を受けることになる。

 その女優とは、高樹沙耶だ。2011年頃から沖縄県石垣市に移住した彼女は、所属していたプロダクションを辞め、大麻への法的規制に反対する姿勢を打ち出していく。そしてついには、2016年に10月に沖縄県内で大麻取締法違反(所持)の疑いで現行犯逮捕されている。やがて、那覇地裁に起訴された彼女には、懲役1年・執行猶予3年の判決がくだされた。

水谷豊、寺脇康文、高樹沙耶の出演者3名が、大ヒット作で再共演を経て共演NGに

『刑事貴族2』『刑事貴族3』では、番組終了後に、出演者同士の確執という悲劇も起きている。

 前出の団優太の後任刑事を演じたのは、当時、劇団「スーパー・エキセントリック・シアター」の若手として売出し中だった寺脇康文だった。

 つまり、水谷豊寺脇康文高樹沙耶という、『相棒』シリーズのオリジナルメンバーがここで共演していたのだ。寺脇にとって水谷は憧れの俳優で、『刑事貴族』シリーズでの共演でさらにその思いを強くしたとされる。その後、俳優としてランクを上げた寺脇は、水谷との再共演を望み、その思いが実現したのが『相棒』であった。そこに、『刑事貴族』シリーズで旧知の仲である高樹も合流。『相棒』ファンには、“『刑事貴族』こそ作品の原点だ”という捉え方もされていた。

 ご存じのように『相棒』はその後長く続く人気シリーズとなっていくが、残念ながら、3人の蜜月関係は破綻していく。まず、杉下右京(水谷)の唯一無二の相棒・亀山薫を演じていた寺脇がseason7 第9話でシリーズを去ってしまうのだ。実はそれ以前から、水谷と寺脇の間に亀裂が生じているという噂が流れていた。寺脇は自ら番組降板を申し出たといわれる。

 杉下右京の元妻で小料理屋「花の里」女将を演じていた高樹(当時は本名の「益戸育江」として活動)も、石垣島移住に伴い自主的に番組から離れた。

 寺脇の後任で、二代目相棒・神戸尊を演じた及川光博が、降板後も度々シリーズに顔を出すのとは対照的に、寺脇がその後、里帰りすることはなかった。『相棒』も人気はピークを過ぎており、もし亀山が特番や劇場版などに再登場するとなれば大きな話題となることは確実だが、現状、そのようなことは1度もない。

 女優を引退状態の高樹は、その後も大麻の有用性を強く訴えている。水谷は共演者のスキャンダルを嫌うという話もあり、もし仮に彼女が女優復帰を望んでも『相棒』に戻ることは難しいだろう。

 このように『刑事貴族』シリーズで知り合い、『相棒』シリーズで仲良く共演した水谷、寺脇、高樹は、完全に共演NG関係になってしまったということになる。3部作にフル出演した松方弘樹、地井武男もすでにこの世にいない。水谷が『刑事貴族』シリーズを振り返ったときに、その胸に、どのような思いが去来するのだろうか?

峯岸あゆみ/ライター

峯岸あゆみ/ライター

CSと配信とYouTubeで過去のテレビドラマや映画やアイドルを観まくるライター。ベストドラマは『白線流し』(フジテレビ系)、ベスト映画は『ロックよ、静かに流れよ』(1988年、監督:長崎俊一)、ベストアイドルは2001年の松浦亜弥。

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