フリーアナウンサーの小林麻耶さんが「スピ夫から逃避別居」と、3月18日発売の「女性セブン」(小学館)で報じられた。「セブン」によれば、この3月上旬までに、昨年住み始めたばかりの高級マンションを出たようで、現在、麻耶さんは実家、夫の國光吟氏は新たに借りたマンションに住んでいるという。
それと軌を一にするように、この夫婦は1月18日、2人で仲よく配信していたYouTubeチャンネル『コバヤシテレビ局』の終了を、突如動画内で報告した。それ以降、麻耶さんのブログからは夫の姿が激減し、國光氏が新設したYouTubeチャンネルに麻耶さんが登場することもない(「女性セブン」)。
昨年11月、麻耶さんがレギュラー出演していた情報番組『グッとラック!』(TBS系)を突然降板したうえ、所属事務所からも契約を解除された際、私は当サイトで麻耶さんが夫に対して「ほれこみ」の状態にある可能性を指摘した。また、「女性セブン」(2020年12月3日号)で、「ほれこみと洗脳はニアリーイコール」とコメントした。
そこで、今回は、洗脳されるとどのような状態になるのか、目が覚めて洗脳が解けるには何が必要なのかについて解説したい。
まず、洗脳されると「ほれこみ」の状態に陥る。「ほれこみ」とは、次の3つの要因がそろった状態である。
1) 相手の過大評価による理想化
2) 無批判
3) 隷従
つまり、相手を実際以上に高く評価して、理想的な人物だと思い込み、批判力を失って「あばたもえくぼ」の状態に陥り、言いなりになるのが「ほれこみ」である。昨年11月に降板騒動を起こした頃の麻耶さんは、まさにこの状態のような印象を与えた。
麻耶さんが「ほれこみ」の状態になるように仕向けるために、夫が用いたのも、洗脳のための典型的な手法のように見えた。最愛の妹である麻央さんを亡くした悲しみを麻耶さんが乗り越えられず心身共に弱っていた時期に近づいているし、次の3つのステップを踏んでいるからだ。
1) 孤立させる
2) 不安や恐怖をあおる
3) 自分に依存させる
まず、麻耶さんの友人が「結婚前の國光さんは、私たちが麻耶ちゃんと会うときは必ずついてきて、何をしゃべるでもなく同じテーブルを囲んでいました」(「女性セブン」)と証言しているが、これは麻耶さんの交友関係を“監視”して、自分の悪口を吹き込まれないようにするためだったのではないか。案の定、結婚後この夫婦の周囲からは人がどんどん離れていった。これは、夫にとってはむしろ思うつぼだったのかもしれない。
また、國光氏は、マネジャー代わりに麻耶さんの仕事先に同行し、打ち合わせの際に「そこは運気が悪い」「神のお告げで、それはやらないほうがいい」などと指摘したらしいが、これは不安や恐怖をあおるためだったように見える。
相談できる人が周囲からいなくなったこともあって、麻耶さんは國光氏がいないと不安定な状態になったようだが、このように夫しか頼る相手がいなくなり、夫にばかり依存するようになったのは、國光氏にとって好都合だったと思う。
こうして、麻耶さんは國光氏の洗脳によって「ほれこみ」の状態になったと考えられる。この状態から抜け出す、つまり洗脳が解けるには、先ほど挙げた3つの要因、相手の過大評価による理想化、無批判、隷従がなくなる必要がある。
夫婦で仲よくYouTubeに配信することをやめたとか、別居するようになったとか、麻耶さんが母親とカフェでランチをしながら話していたとかいう事実から、少しは國光氏の“アラ”が見えるようになり、目が覚め始めたのかとも思うが、「ほれこみ」の状態からそんなにたやすく抜け出せるとは思えない。
「麻耶さんは國光さんと離れて暮らすことを喜んでいるわけではない。苦渋の決断なんだと思います」(「女性セブン」)という小林家の知人の証言からもわかるように、麻耶さんの心はまだ揺れ動いているはずだ。
なぜかといえば、誰かを信じるということは、その人を信じた自分を信じることでもあり、無批判に信じていた相手と決別することは、自己否定につながるからである。また、自分の選択や決断が間違っていたと認めることは、自身の愚かさを認めることにほかならないが、それは誰にとっても受け入れがたい。
もちろん、催眠術にかかった状態がずっと続くわけではなく、いつか覚めるときがくるのと同様に、「ほれこみ」の状態から覚めるときもいずれくるのだが、そのときには必ずといっていいほど幻滅がつきものだ。だから、幻滅を味わうのが嫌で、以前と変わらず「ほれこみ」の対象を信じ続けようとする方も少なくない。
麻耶さんの目が覚めて、洗脳が解ければいいとは思うが、そう簡単にはいかないだろう。これから一山も二山もあるのではないだろうか。
(文=片田珠美/精神科医)
参考文献
ジークムント・フロイト「集団心理学と自我の分析」(小此木啓吾訳『フロイト著作集第六巻』人文書院 1970年)