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『西郷どん』特番、面白かったのに視聴率不振だったワケ…役者や制作現場が脚本軽視か

文=吉川織部/ドラマウォッチャー
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 鈴木亮平が主演を務めるNHK大河ドラマ『西郷どん』の特別編『西郷どんスペシャル~鈴木亮平×渡辺謙の120日~』が1日に放送された。本編を1回休んで同じ時間に特番を放送するという異例の番組構成だ。NHKの発表によれば、今年はこれまで全50話だった大河ドラマを47話に短縮し、カットした3話分を特番に振り替えるということらしい。

 NHKがドラマの番宣番組を放送するのは珍しくないが、大河ドラマ本編の代わりに番宣を放送するのはもちろん初めて。これには放送前から「1話あいてしまうとシラける」「特番は本編と別の時間にしてほしい」など、視聴者から批判の声が上がっていた。視聴率も振るわず、前回より4.4ポイント減らして9.7%という結果になった。特番でさらに本編を盛り上げようとのもくろみは、あまり実を結ばなかったようだ。

 とはいえ、今回の特番そのものがつまらなかったかといえば、決してそうではない。西郷吉之助を演じる鈴木亮平と島津斉彬を演じる渡辺謙の2人に焦点を絞り、役柄とリンクするような“師弟関係”や、リアリティーを追求した役づくりなど、撮影の裏側を惜しげもなく明かした番組内容は間違いなくおもしろかった。だが、大きな違和感が残ったのも事実だ。

 違和感の大きな要因は、役者たちのストイックな役づくりを強調するあまりに、あたかも脚本や演出が軽んじられているかのような印象を受けてしまったことだ。ネット上でも大きな話題を呼んだ、斉彬が吉之助を蹴ってふっ飛ばすシーンは、台本では「平手打ち」だったという。また、命を懸けて殿に仕えると誓う吉之助に斉彬が掛けた「なんでもかんでも命を懸けるな。命はひとつじゃ」という台詞も台本にはなく、渡辺のアドリブだったという。

 これらのアドリブによってドラマとしての出来が良くなったのかどうかは人それぞれ感じ方が違うと思うが、論じたいのはそこではない。視聴者の間で良くも悪くも話題を呼んだシーンや台詞が、脚本家や演出家によって生み出されていたのではなかったという事実である。役者が現場で演出や台詞に口をはさむこと自体はそれほど珍しくないが、ストーリーの中で山場になる場面が役者の発案であると、制作側が明かしてしまうのはいただけない。それは、脚本と演出が力不足であると自ら認めるようなものだからだ。

 今回の特番を振り返ってみると、実は渡辺も鈴木も一度も脚本を褒めていない。普通なら少しくらいは、「台本がいいので、それを自身がどう表現するか考えさせられた」といった具合に、少しは脚本家を“ヨイショ”するはずだ。役づくりにあれだけ真剣な彼らが、一言もそれに類した発言をしなかったことから見て、内心では中園ミホ氏の脚本に不満を感じながら演じていることは間違いないだろう。もしかしたらカットされただけなのかもしれないが、それはそれで番組制作側が「役者のヨイショ」はしても「脚本家のヨイショ」はしなかったことになる。いずれにしても、「視聴率は健闘しているが脚本は褒められたものではない」というのが、『西郷どん』現場サイドの認識なのだろう。

 さて、物語の序盤を牽引してきた斉彬は、間もなく物語から退場することになる。ドラマにとって大きすぎる存在であっただけに、その後のストーリーをどう盛り上げていくかが問われることになる。果たして中園脚本は、渡辺謙のアドリブがなくても成立するのだろうか。
(文=吉川織部/ドラマウォッチャー)

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