6月24日より、Netflixでついに配信開始された『全裸監督2』。待望の人気シリーズ続編なわけだが、やはり今回もすごかった。
昨年、日本の有料会員数が500万人を突破したことが公表されたNetflix。その会員数伸長の起爆剤となったといわれているのが、“アダルトビデオの帝王”村西とおるの半生を描き、2019年に配信開始された『全裸監督』である。このシーズン1で主演・山田孝之は、村西とおるになりきるため、トレーニングして体重を8キロ増量。さらに今回のシーズン2では、トレーニングではなく脂肪のみで通常体重より10キロも増量して撮影に臨んだという山田について、ある映画ライターはこう語る。
「ここ数年、プロデューサーなど製作業にも積極的に取り組んでいる山田孝之さんですが、この『全裸監督』では役者業に専念して全身全霊で挑み、シーズン1の時点ですでに、“山田孝之の代表作”といわれるほどの評価を得ています。前作はエロで成功した男の立志伝でしたが、今作のテーマは、そこからの転落。前作より老けた村西とおるを演じるため、だらしないカラダを徹底的に作り上げ、血走った目で全速力で転落していく男を見せてくれています。
また、村西とおるのあの特徴的な話し方を芝居に取り入れつつ、決してモノマネにはならず、彼の背景にあるさまざまなエピソードを緻密に演じ切ることで、愛憎が相半ばするキャラクターを見事に作り上げているのもすごい。今の若手役者のなかで、こんなトリッキーな豪傑をここまで演じ切れるのは、山田さんしかいないですよ」
Netflixの予算規模は、日本の地上波ドラマとはケタがひとつ違う
『全裸監督2』は、2020年の3月にクランクイン。緊急事態宣言が発出される直前、まさにコロナ禍ど真ん中に撮影されたという。
「3月にクランクインしてすぐに緊急事態宣言が発出され、2カ月ほど撮影が休止。6月に再開するも、Netflixは外資系ですから相当厳しい感染予防ガイドラインが課され、厳戒態勢で撮影することを余儀なくされたそうです。『大人数でのロケはNG』などの難題が山積するなかで、撮影が終わったのは11月。しかし、役者とスタッフが一丸となって『コロナ禍でも絶対作品を完成させるんだ』と苦難に立ち向かう姿は、劇中で『たとえ捕まってもアダルトビデオを完成させるんだ』という村西とおるやスタッフたちの熱い思いとリンクし、非常に厚みのある作品になったと思います。
それと、1980年代の街並みや駅を再現する作り込みが、今回もすごい。役者陣の熱演に負けず劣らず、制作スタッフの熱量が本当にすごいです。看板や車などもCGを駆使して当時のものを再現し、一寸の隙もないほどの完成度。全世界190カ国に配信されるNetflixのオリジナルドラマは、国内の地上波ドラマとは制作予算が1ケタ違うといいますから、ドラマどころか国内映画をも凌駕する規模の予算が投下されたのではないでしょうか」
“元月9女優”西内まりやの女優復帰作としては、いささか中途半端との声も
前作から約2年ぶりにリリースされた『全裸監督2』。「前科7犯、懲役370年、借金50億円」がウリ文句の村西とおるという男の激動の半生記も、本作で完結となる。すでにシリーズを見終わったというある週刊誌記者は「あえて苦言を呈するならば……」と前置きしたうえで、こう明かす。
「どこまでが本当でどこまでは嘘かわからないところのある村西さんへのロングインタビューが原作のベースとなってますから、ストーリーも虚実ないまぜな部分もあると思います。しかし、バブル期にアダルトビデオビジネスで栄華を極め、当時はまだ日本で認知すらされていなかった衛星放送に対して、『空からエロを降らせる』という壮大な野望のもとに大金を投下。やがてバブルが弾けるとともに散っていったビジネスマンの物語……という視点で観ると、骨太の経済物語といえなくもない(笑)。
そういう意味でも非常によくできた作品なのですが、あえて苦言を呈するなら、本作で女優復帰となった西内まりやさんがセクシー女優役ではなかった点が非常に残念、というところでしょうか。2017年には月9ドラマで初主演するなど大活躍していた彼女ですが、当時の所属プロであるライジングプロダクションと揉めて、同プロを退所。以降は女優業から遠ざかっていた彼女が本作で4年ぶりに女優復帰ということで、メディアも盛んに書きたてていましたよね。
しかし、いざ蓋を開けてみるとクラブのホステス役で、村西とおるとのからみはナシ。てっきり私は、本作の“ミューズ”であり、のちに村西さんの奥様になられるセクシー女優・乃木真梨子役を西内さんが演じるものとばかり思っていたのですが……やはり元“月9女優”にいきなりのセクシー女優役はちとハードルが高かった模様。個人的には本作は、彼女が脱ぐに値する作品だと思いましたし、そういう意味では、少々中途半端な復帰となってしまった感は否めませんね」
しかし、“元月9女優”西内まりやの出演もかすむほどの濡れ場が随所に出現する本作。役者たちの“肉弾戦”が繰り広げられる『全裸監督』シリーズにおいては、やはり身も心も解き放った者だけが高評価を得られるのかもしれない。