土屋太鳳主演の連続テレビドラマ『チアダン』(TBS系)の第3話が先月27日に放送された。広瀬すずが主演を務めた同名映画で描かれた福井中央高校のチアダンス部「JETS」の打倒を目指す福井西高校の女子生徒たちを描く青春ドラマだ。
第3話では、土屋演じる藤谷わかばが部長を務めるチアダンス部「ROCKETS」がチアダンス福井大会に出場して挫折を味わい、解散の危機に陥るも、顧問の漆戸太郎(オダギリジョー)の一喝で再びまとまりを取り戻すところまでを描いた。
第1話と第2話は大絶賛したくなる出来だったが、この第3話については凡庸な印象を受けた。おそらく、解散の危機に陥ることは予告の時点で分かっており、当然のことながらドラマがまだ序盤である以上、本当に解散するわけがないことも視聴する前からわかっていたからだ。第3話のストーリーはここから1ミリも外れておらず、すべてが予想通りに進んで幕切れとなった。
桐生汐里(石井杏奈)が打倒JETSに燃えるあまりに物言いがキツくなり、「そんなんじゃやってられんわ」と部員たちがキレるのも毎度おなじみだし、駆け出しのROCKETSが嘲笑を浴びる展開も第2話で見た光景だ。
ただ、筆者は前回のレビューで、『チアダン』はベタベタな青春ドラマであり、時代劇にも似た様式美が特徴だと書いた。好き嫌いはあるだろうが、少なくとも第1話と第2話はそうした「お約束感」がうまくハマっていたように思う。
第3話もその路線を踏襲しているのに、今回に限ってつまらなく感じた理由はなんだろうと考えてみた。思い当たる点はひとつしかない。というより、すでに答えを書いているのだが、結局のところ「予告映像でネタバレしてしまったから」に尽きる。仮に、「初の大会出場にもかかわらず思いのほか好成績を残すのか?」と思わせるような予告だったとしたら、挫折からの解散危機、そして再度の結束という流れで、もっと感動できたに違いない。予告映像を編集する人には、もう少しネタバレを防いでくれるようにお願いしたい。
とはいえ、第3話にまるっきり見どころがなかったというわけではない。太郎の妻・今日子(松本若菜)がJETSのビデオを視聴したり指導者の本を読んだりしてチアダンスについて学ぼうとしていた場面は夫婦の愛を感じたし、今日子が太郎にした助言がROCKETSの再結束につながるという結末もよかった。今日子の発言が伏線であることはあまりにもあからさまに見え見えだったが、それをきちんとラストで回収してくる構成はやはり気持ちがいい。
あたふたするばかりで頼りなさげに見えた太郎が、実は部員一人ひとりをよく観察して、何が欠けているのか、何が必要なのかを分析していたというサプライズも、「やられた」という感じだ。チアダンス部の解散を宣言して去ろうとする彼女たちを呼び止め、一人ずつに的確なアドバイスを伝えていく場面は、当初こそ「なんだかクサい場面だなあ」と思って見ていたが、聞いているうちに不覚にも感動してしまった。
このドラマのオダギリジョーは、一見するとボーっとしているように見えて実は心の中はものすごく熱い、というキャラクターがなかなか似合っている。今後も要所要所で彼女たちを励まし、活を入れる重要な存在になりそうだ。
一方で、野球部の元エース椿山春馬(清水尋也)をめぐってわかばと汐里が三角関係になりそうだったり、柴田茉希(山本舞香)が汐里に恋愛感情を抱いてるかのような描写があったりと、微妙に恋愛要素が見え隠れするのが気になる。高校生を描くのだから恋愛の一つや二つあっても当たり前だとは思うが、チアダンス部の本筋を邪魔しない程度にしてほしい。
(文=吉川織部/ドラマウォッチャー)