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『パーフェクトワールド』に感動の渦…障害者利用の“お涙頂戴ドラマ”などではない

文=吉川織部/ドラマウォッチャー

 松坂桃李が主演を務める連続テレビドラマ『パーフェクトワールド』(フジテレビ系)の第2話が23日に放送される。このドラマは、大学時代の事故で下半身不随になった建築士の鮎川樹(松坂)と、高校時代の同級生・川奈つぐみ(山本美月)が繰り広げるラブストーリー。16日に放送された第1話の平均視聴率は6.9%(ビデオリサーチ調べ、関東地区/以下同)だった。

 第1話の平均視聴率が6.9%というのはあまりにも低いが、もともとこのフジテレビ系火曜21時枠はあまり数字を取れていない。前クールの『後妻業』は全話平均視聴率6.2%、2018年10月期の『僕らは奇跡でできている』は同6.5%、同7月期の『健康で文化的な最低限度の生活』に至っては同5.7%だった。それを考えると、実はそんなに悪くない数字だ。

 とはいえ、当初からこのドラマを敬遠した人も少なくないと思う。予告などをちらりと見ただけでも、車いすに乗った男性と健常者である女性のラブストーリーだとわかってしまうからだ。ドラマや映画には「病気モノ」もしくは「難病モノ」といったジャンルが確立されているが、そのほとんどがなんだかんだあって最終的にお涙頂戴の結末を迎える。当然といえば当然なのだが、これに対して「クサいから好きではない」「結末がわかり切っている」「泣かせようという狙いが見え見え」などの拒否反応を示す人も少なくない。

 実は筆者も、「どうせ、このドラマもそうなんだろう」と思っていた。だが、第1話の放送が始まってすぐにその考えを改めた。しっかりとした取材に基づき、障害者の生活や抱える悩みなどを非常にリアルに描いているからだ。

 たとえば、下半身不随であっても自分で車いすに乗り降りできるし、自動車の運転もできる(もちろん、そうではない場合もある)。松坂演じる鮎川にとってこれらは日常生活の一部であり、こともなげにそれらを済ませるが、障害者の生活に初めて触れる川奈はいちいち驚く。川奈が視聴者の代わりに驚いてくれるおかげで、テレビの前の我々も安心できる。つまり、「そんなことを知らなかったのは自分だけなのか」「自分は障害者に理解や関心がないのではないか」と恥じ入る気持ちにならなくて済むのだ。

 一方、障害者ならではの悩みや葛藤もたくさん描かれる。外出する前には、車いすで移動できるかどうかを事前に調べておかなければならないというのも、そのひとつだ。第1話では鮎川と川奈が美術展に出かけるが、建物が古いために車いすでは入場できなかったというエピソードが描かれた。

 自分の足で難なく歩ける人は、入口や館内に段差があるか、エレベーターがあるかを普段ほとんど意識していない。だが、そうではない人にとってはとてつもなく重要な問題だ。車いすでは入場できないことを知った川奈は施設の係員に食ってかかるが、当の鮎川は「すいません、お騒がせしました」と微笑みを浮かべてすんなり引き下がる。描写としてはこれだけだが、鮎川がその心境に至るまでにはどれほどのつらい思いをしてきたのだろうと切ない気持ちにさせられた。

 自分の失態だと感じた川奈は何度も鮎川に謝るが、彼は「謝られてばかりいると、一緒にいるのが申しわけない気がしてくるから、あんまり謝んなよ」とたしなめる。これもなかなか深い台詞だ。絶えず周囲の人に気を遣われ、腫れ物のように扱われて心地の良い人がいるわけがない。自分に置き換えれば誰でもわかりそうなものだが、実際に障害を持つ人と接した時にナチュラルに振る舞うのはとても難しい。

 このドラマは、このようにさまざまな示唆に富んでおり、単に感動を押し付けたりむやみに泣かせようとするつくりにはなっていない。率直に言って鮎川も川奈もいい人すぎるし、いくら初恋の人だからといって川奈がそこまで鮎川を好きになる理由もいまひとつよくわからないが、物語の基盤である障害者の生活と心情を丁寧に描いていることには好感が持てる。

 視聴者の反応も、「久々に泣かせてくれるドラマ」「非常に大きな勇気をもらった」「ストーリーも構成もキャスティングも最高!」「1時間があっという間に感じた」と絶賛する声が圧倒的に多い。

 第2話では、川奈に強力なライバルが登場する。鮎川の元看護士でヘルパーの長沢葵(中村ゆり)だ。中村は最近クセのある悪役で見かけることも多いので、どのように話をかき回してくれるのか楽しみだ。
(文=吉川織部/ドラマウォッチャー)

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