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碓井広義「ひとことでは言えない」(6月4日)

ギャラクシー賞発表、受賞したドラマ2本、なぜ感動呼ぶ?「いい話」と一線を画す

文=碓井広義/上智大学文学部新聞学科教授

 さらに被災地に暮らしながら家も家族も無事だった男(中井貴一)は、何も失っていないことに罪悪感を抱いている。不公平だとさえ言い、「自分の無事が後ろめたいんです」と悩んでいる。 だがその一方で、支援する側として「そうそう他人の身になれるか」という反発心も押さえきれない。

 ドラマは相反する思いが同居する当事者の心情を、巧みなストーリーとセリフで表現していた。震災から3年。これからが本当の意味での「絆」が問われる正念場だと教えてくれる秀作だ。

あまちゃん』の成功を支えていたのが宮藤官九郎の脚本だったように、この作品もまた、山田太一ならではの脚本によって、見る者の気持ちを動かすドラマとなっていた。

 ぜひ、ギャラクシー賞優秀賞の受賞記念として、再放送されることを望みたい。

碓井広義/上智大学文学部新聞学科教授

碓井広義/上智大学文学部新聞学科教授

1955(昭和30)年、長野県生まれ。メディア文化評論家。2020(令和2)年3月まで上智大学文学部新聞学科教授(メディア文化論)。慶應義塾大学法学部政治学科卒。千葉商科大学大学院政策研究科博士課程修了。博士(政策研究)。1981年、テレビマンユニオンに参加、以後20年間ドキュメンタリーやドラマの制作を行う。代表作に『人間ドキュメント 夏目雅子物語』など。著書に『テレビの教科書』、『ドラマへの遺言』(倉本聰との共著)など、編著に『倉本聰の言葉――ドラマの中の名言』がある。

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