阪神タイガース再建のキーマンともいわれる掛布雅之・ゼネラルマネジャー付育成&打撃コーディネーター(DC)が、球団から“マル秘指令”を受けていた。阪神において現在、空き番号となっている背番号31番の後継者選びである。
阪神の31番は、どうしても掛布DCのイメージが強い。掛布DC が1988年に現役を引退して以来、3年間空き番号となり、その後、萩原誠、広沢克実、濱中おさむ、林威助が引き継いだが、目立った活躍はできなかった。
「昨秋のドラフト会議で2位指名した横田慎太郎外野手に継承させる案も出ていたのですが、入団会見前に桧山進次郎氏(現解説者)の付けていた24番に変更されました」(関係者)
掛布DCは三塁手、横田は外野手だからというのが理由だが、それは「建て前にすぎない」と同関係者は言う。プロ野球界には背番号に関して、気になるジンクスがある。「2代続けて活躍しない」というものだ。とはいえ、このジンクスが当てはまらなかったケースも多く、3代目の広沢以降も活躍していないところからして、「トラの31番は大成できない」と言ったほうが適切だろう。
「今秋のドラフト会議で左打ちの好打者を獲得できた場合、31番を継承させるかもしれません」(同)
根強い掛布人気
そもそも、31番の後継者問題を球団が取り上げたのは、「掛布人気」を再認識させられたからだという。
「掛布DCの阪神復帰をゴリ押ししたのは、中村勝広ゼネラルマネジャー(GM)です。阪神フロントは、現役引退後に金銭トラブルなどの問題を起こした掛布DCを指導者として復帰させたくないと考えていました。しかし、卓越した打撃理論は『掛布嫌いのフロント要人』も認めるところで、キャンプで訓示を受けた若手が心酔することまでは、フロントの想定の範囲内でした」(在阪記者)
想定外だったのは、ファンの間での人気の根強さだ。一軍が地方巡業に出た際、「掛布のファンだった」と話す後援者がいるかと思えば、現役時代を知らないはずの若い世代にもファンが多い。掛布DCが「ポスト和田」の候補者に浮上したのも、その影響である。そこで掛布DC自らが31番の後継者を選ぶという演出をすることによって、甲子園球場の観客動員数を伸ばそうとしているのだ。
「9月2日、在阪メディアが『来季、掛布DCが一軍コーチに就任か』と報じました。そういう人事案もあるといった内容でしたが、これは球団が意図的に情報を流し、ファンの反応を確かめたのだといわれています」(前出関係者)
実際に一軍打撃コーチに就任するかどうかは不透明な状況だが、いずれ正式にユニフォームを着る可能性は高いという。
「中村GMは後輩の面倒見が良く、掛布DCのことは『千葉県の後輩』として現役時代から可愛がっていました」(同)
もし掛布DCがユニフォームを着るのなら、いっそ自分で31番を付ければいいのではないだろうか。
(文=美山和也/スポーツライター)