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吉澤恵理「薬剤師の視点で社会を斬る」

若い女性の梅毒患者が急増している理由…コンドーム着用でも安心禁物、誰でも感染のリスク

文=吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト
若い女性の梅毒患者が急増している理由…コンドーム着用でも安心禁物、誰でも感染のリスクの画像1「Getty Images」より

 街に真新しいスーツを着たフレッシャーズが溢れる4月。新社会人となった男性諸君の中には、意気揚々と「大人への階段」を上るものも多いと聞く。都内風俗店で働くA子さん(22歳)によると「春は、大学卒業や新社会人の記念にみたいなノリで初めて風俗を利用してみたというお客さんが増えます」という。筆者が若い頃は、新入社員に夜の遊びをレクチャーする先輩社員がいたのも事実であり、今も昔も男性諸君の好奇心は不変なのかと「男のロマン」さえ感じる。風俗に限らず、性への好奇心はあってこそ健全ともいえるが、好奇心を探求する前に今一度、正しく認識してほしいことがある。それは「性感染症」についてである。

 1990年代以降、梅毒の患者数は年間1000人を下回っていたこともあり、昔の病気と考える人も多いが、それは間違った認識である。近年、梅毒患者は増加の一途をたどり、2013年には1200人を超え、17年には5770人と急増している。特に若い女性に感染が広がっている状態にあり、梅毒の脅威は身近にあるという認識を持っていただきたい。

コンドームは万能ではない

 性感染症は、梅毒だけではない。クラミジア感染症、淋菌感染症、性器ヘルペス、尖圭コンジローマ、HIV感染症などが挙げられる。

 このほかにも、性感染症と認識する人は少ないかもしれないが、B型肝炎、C型肝炎も性交渉によって感染する可能性がある。性感染症は、粘膜から主に体液を介して感染する。コンドームの使用は、性感染症の感染予防に有効であることは間違いない。男性諸君には、性交渉の際は、たとえ相手の女性が「コンドームを使用しなくていい」と言ったとしても、必ず着用してほしい。

 しかし、コンドームを着用したからといって100%安心とはいえない。それは、オーラルセックスをすれば感染の危険が増大するからである。口の中に傷などがあれば、その傷口からウイルスが侵入し感染してしまう。また、性器ヘルペスのように、体液だけでなく症状が出ている患部と皮膚の接触によって感染するものもある。感染予防にはコンドームの使用とともにオーラルセックスを控えることが有効といえる。

 20人に1人がクラミジアに感染しているとのデータもあるように、性感染症は性交渉がある人なら誰もが感染する可能性があるといってもいい。定期的な検診で早期に感染に気づいて治療することが大切である。性感染症を治療せずにいると、性器の炎症部からほかのウィルスなどに感染しやすくなってしまう。たとえば、HIVウィルスの感染力は低いが、粘膜に炎症があればそこからウィルスが侵入しやすくなり、感染の危険性は何倍にも増大する。性感染症の感染リスクは、クリーンな性交渉で低くすることができる。風俗での遊びでも同様に自己管理が大切だ。

 また、当然ながら風俗の利用にはマナーがある。

「乱暴な言動はルール違反です。なかには気持ちがノってしまってのことだと思いますが、過剰サービスを求めるお客さんもいます。それはルール違反なので、マナーを守って遊びに来てほしいです」(A子さん)

 筆者は、好奇心の探求は男性に活力を与えるものと理解しているが、気づいた時に思わぬ代償に苦しむことがないようにしていただきたい。
(文=吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト)

吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト

吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト

1969年12月25日福島県生まれ。1992年東北薬科大学卒業。福島県立医科大学薬理学講座助手、福島県公立岩瀬病院薬剤部、医療法人寿会で病院勤務後、現在は薬物乱用防止の啓蒙活動、心の問題などにも取り組み、コラム執筆のほか、講演、セミナーなども行っている。

吉澤恵理公式ブログ

Instagram:@medical_journalist_erie

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