一方でMVNOに対しては、先の取りまとめにおいて「MVNO自身が、大手携帯電話事業者との差別化を図りつつ、より多くの利用者から選ばれるような戦略をとっていくことが望まれる」と触れられており、加入者管理機能の開放を前提にやや突き放しているのも気になる。その開放も、協議の促進はするもののいつ実現するかはわからないし、仮に開放が実現したとしても、MVNOにとって自由度が高まるメリットがある一方で、運営や管理にかかるコストや手間が増大するため、MVNOという事業自体のハードルを上げることにもつながりかねない。
そうしたことから今回の方針では、MVNOの競争力を高めるよりも、増えすぎたMVNOの淘汰を狙っているように見えなくもないのだ。
将来的に端末代が値上げ
また、もっとも時間をかけて議論された端末の割引、ひいては高額キャッシュバックの問題に関しても、割引を抑制する方針が打ち出されたことによって、結果的に多くのユーザーが損をする可能性が高まっている。
というのも、今回の方針では公平性が非常に重視されており、料金を下げるべきはこれまで端末値引きの恩恵を受けられなかった、機種変更をあまりしないライトユーザーとされている。スマートフォンを頻繁に利用しているユーザーに対しては応分の負担をするよう求めていることから、値引きの可能性はないといっていいだろう。
その一方で、端末購入時の割引が抑えられ、端末代が値上がりする可能性が高まることから、多くのユーザーにとって値上げ要因が増えてしまうのだ。安倍首相の料金引き下げ発言とは逆に、多くの人が端末代値上げで損をする可能性が高いというのは、なんとも皮肉な話でもある。
今回の措置は、あくまで高額キャッシュバックなどによって、端末代が「0円」を切ってお金がもらえてしまうような状況を阻止するためであり、販売奨励金を完全になくすわけではないと説明されている。しかしながら今回の方針をバネに、総務省側では今後一層公平性を追求し、販売奨励金の額を大幅に抑え、高額な端末は高額で販売されるようにしたいものと見られている。将来的に端末代が値上げしていくことに変わりはないだろう。
ビジョンが見えてこない
端末を安価に販売し、毎月の料金から割引分を回収するというビジネスモデルは、確かに端末を積極的に買い替える人とそうでない人との不公平感や、大手キャリアが米アップルのiPhone販売に極度に力を入れる「iPhoneびいき」を生み出すなど、さまざまなデメリットをもたらしていることは事実だ。