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小林敬幸「ビジネスのホント」(12月10日)

アベノミクスは経済を動かしていない 景気への影響小、「燃費の悪い」経済政策

文=小林敬幸/『ビジネスをつくる仕事』著者
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雇用増は成果
 
 雇用増は、明らかに今の日本経済にプラスだ。労働力の投入を増やせば、経済はその分成長する。日本には、女性や元気な高齢者など働く能力を持つ潜在労働力がたくさんある。今は「就業の意図なし」として失業者としてカウントされていないこの層が労働参加すると、経済成長に直結する。失業率より雇用率が大事だ。従って、安倍首相が「平均賃金が下がっても総雇用者所得が増えたことは良い」と主張するのは正しい。

 また、たとえ非正規雇用者の増加が主力だとしても、総雇用者数が増えるのはいいことだ。職のない人が非正規でも雇用されれば、格差の縮小にもつながる。前述のように雇用増をもたらしたのがアベノミクスなのかは怪しいが、従来円安や株高を主張していた安倍首相が、選挙での市民の反応をみながら雇用増が大事な論点なのだと気づきだしたのは良いことである。与野党ともに雇用増につながる政策に焦点を絞って建設的議論をすることが望まれる。

(3)アベノミクスの三本の矢の評価

 以上を踏まえて、アベノミクスの三本の矢の一言評価をしてみよう。

・金融政策:円安・株高には効果があった。ただし、前述のように、その結果がプラスの成果なのかどうかは、怪しい。
・財政政策:出したお金だけの効果はあったが、従来の財政政策同様、波及効果・乗数効果はなかった。
・成長戦略:何もできていないし、できたことの効果も出ていない。

 以上を総じていうと、次のようになる。

・アベノミクスは、大きな成果はなかったが、少し成果があった。
・安倍政権下の経済政策は、ブレーキとアクセルを同時に踏んだので効率が悪かった
・それでも、民主党政権の経済政策よりよほどましだった。

(4)今後の経済政策

 では、これから、何を軸に経済政策を論ずればいいのだろうか。そして次の政権は何をするべきなのだろうか。

小林敬幸/『ふしぎな総合商社』著者

小林敬幸/『ふしぎな総合商社』著者

1962年生まれ。1986年東京大学法学部卒業後、2016年までの30年間、三井物産株式会社に勤務。「お台場の観覧車」、ライフネット生命保険の起業、リクルート社との資本業務提携などを担当。著書に『ビジネスをつくる仕事』(講談社現代新書)、『自分の頭で判断する技術』(角川書店)など。現在、日系大手メーカーに勤務しIoT領域における新規事業を担当。

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