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新見正則「医療の極論、常識、非常識」

中国人も日本人と同じく救急車無料&低額で最先端医療を受けられる、日本の皆保険制度

文=新見正則/医学博士、医師
中国人も日本人と同じく救急車無料&低額で最先端医療を受けられる、日本の皆保険制度の画像1救急車(「Wikipedia」より/下野孝太郎)

 今回は、中国人観光客の話で盛り上がっています。中国人といっても直接に確かめたわけでもなく、なんとなく中国人だと思われる服装で中国語だと思われる言語を話している観光客という意味です。

“非常識君”は次のように言います。

「中国人観光客は横に並んで歩くし、大声で喋りまくるし、列は守らないし極めて不愉快。だから彼らがいるレストランやショップには絶対に入らないし、また電車などでは彼らから離れるようにしている。いっそ中国人観光客などは日本に来てくれないほうが心の平穏には最良だ」

 一方、“極論君”は次のように主張しています。

「彼らの振る舞いは、しばしば傍若無人だが、日本に遊びに来てくれる観光客だから、大目に見てあげよう。数十年前に日本人観光客も欧米では同じように見られていたのだから。そして、彼らはたくさんお金を日本で遣ってくれるので、困っている中国人観光客がいれば、むしろ積極的に案内を買って出るのだ」

 極論君もたまには良いこと言いますね。多額のお金を日本に落として、そして帰国してもらいたいですね。一部では好景気と言われていますが、まだ末端の人々にはそんな実感はないので、せめて観光関連の業種が中国人観光客で潤うことは日本にとっては素晴らしいことです。

 また、“常識君”は医療の立場からこうコメントします。

「非常識君は中国人観光客に排斥的、一方で極論君は中国人観光客に極めて好意的ですね。医療は、中国人に限らず外国人には極めて好意的なのです。救急車は日本人も無料ですが、当然外国人も無料ですよ」

 確かに、ある人が救急車を有料化すべきという発言をして、そしてその書き込みが炎上したことがあります。「有料化したら貧乏人はどうなるのだ。貧乏人が救急車を安心して呼べるシステムが崩壊する」といった論調が巻き上がりました。

 これを受け、別の人が次のようにコメントしたら、少し炎上が弱まりました。

「現状では、外国人が救急車を利用しても無料です。救急車を有料化すれば、外国人の要請には彼らの旅行保険に請求できるのですが、今はできません。一度料金を支払って、日本で税金を支払っている人にはその費用が還元されるシステムにすれば、外国人からの取りっぱぐれはなくなりますよ」

すべての人に優しい日本の保険医療システム

 そして常識君は、日本の保険医療システムについて語ります。日本で勉強している外国人は日本の皆保険システムに加入します。日本で働いている外国人も日本の皆保険システムに加入します。そして彼らは3割負担で日本人と同じく、日本のどの保険医療機関でも最先端の医療を受けることができます。さらに高額医療費の還付もありますから、上限は通常毎月約8万円です。

 先日、ある中国人のビジネスマンが肺がんになりました。彼は日本保険システムに加入していたので、最近登場した超高額な抗がん剤(毎月数百万円、一連の治療で数千万円とも言われています)の治療を受けています。「中国に居たら私はこんな治療は受けられない。日本の医療保険に入れてもらえたから、こんな新しい超高額な薬を使える。日本の医療システムのお陰で私の命は生き長らえている」としみじみ語っていました。

 つまり、日本の医療システムは、日本人のためのシステムではなく、日本の医療保険に加入している人のためのシステムです。ですから常識君が言うように、日本に来てくれる人には基本的に全員に対してウェルカムなのです。本当に優しいシステムです。超高額医療費も医療保険でカバーできるので、中国で病気になった人を日本の会社で働くようにして、そして日本の医療保険に加入させて、日本で最先端の治療を日本人と同じ金銭的負担で受けさせるような代行業ができそうですね。すでにあるのかもしれません。

 40兆円という医療費をどうやって削減するかに関係者が奔走し、翻弄されている昨今、実は医療は誰にでも優しいシステムを維持しています。中国人を含めて世界の人に開かれている素晴らしい医療システム、つまり現実は極論君の意見に近いといえます。
(文=新見正則/医学博士、医師)

新見正則/医師、新見正則医院院長

新見正則/医師、新見正則医院院長

外科専門医 /消化器病専門医 /消化器外科専門医 /消化器内視鏡専門医
慶應義塾大学医学部卒業後、外科医として研鑽を積む。大学病院や関連病院で診療にあたるほか、英・オックスフォード大学にて博士課程を修了。
新見正則医院 公式サイト

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