トンデモ中間搾取横行の派遣業界!不安定&低賃金労働者の量産を推進
(2)派遣元企業の許可制
労働者派遣事業者は、一般事業が許可制、特定事業が届け出制でした。しかし、一般事業なのに特定事業を偽装して「許可逃れ」をする違法な派遣業者がはびこっていました。そのため、悪質事業者を排除して統廃合をすすめる意味合いもあり、すべての業者を許可制にしました。
(3)派遣労働者の雇用安定とキャリアアップ
3年の派遣期間終了後に「派遣先に直接雇用を依頼する」「新たな派遣先を紹介する」「派遣元での直接雇用の義務化」することなどが盛り込まれましたが、これらはあくまで努力目標なので無意味です。また、派遣元に派遣労働者への計画的な教育訓練を施すことの義務化も盛り込まれましたが、しょせんは派遣労働者の中間搾取分からその費用が賄われるだけですから、かえって賃金の低下を招く恐れさえあるでしょう。
このように、どうみても派遣先企業と派遣元企業にとってサービス満点の内容であり、とても派遣労働者の雇用の安定や賃金アップにつながるような内容ではないのです。まさに改悪です。
なお、著者は「間接雇用」の派遣より「直接雇用」が望ましいと主張しているのですが、近頃はブラック企業も横行していますから、いちがいに直接雇用を推奨しているわけではありません。そもそもブラック企業の問題は、本来別個の労働規制の問題だからです。労働者の賃金を「中間搾取」して、利潤を上げる業態が許されるべきではない――と主張しているのです。
あくまでも労賃の「中間搾取」は禁止すべきです。こんなでたらめな法律の存在を許していたら、賃金の平等性に則った「同一労働・同一賃金」の原則も、やがて正社員の賃金までもが安い派遣労働者水準の賃金へと限りなく低下を続けてしまうでしょう。「正社員ゼロ」になるような社会を危惧しているのです。
今やインターネット上において、企業も臨時業務の人員募集ぐらいならいくらでも可能な時代になっています。中間搾取を正当化する派遣事業などという、極端に不安定で低賃金化を推進する業態そのものは、もはや不要な存在というべきなのです。せっかく、生産年齢人口が減少し、人件費高騰によるインフレ期待もあるところに、一生涯低賃金の派遣労働者の固定化を図り、さらに正社員からの派遣労働者化を推進するような法律につくり変えているようでは、今後少子化はさらにすすみ、デフレ脱却は遠のき税収も個人消費も振るわない、お先真っ暗な日本の未来が到来するでしょう。こんな労働者派遣法などという法律は、即刻廃止・禁止こそが望ましいのです。
来年の参議院選挙からは、18歳以上の青年にも選挙権が与えられます。若者の未来を摘み取るようなでまかせの政治の内実をしっかり見極めて、投票行動にも生かしていただきたいと願うばかりなのです。
(文=神樹兵輔/マネーコンサルタント)