その常識の真偽を確かめるため、データで検証しているのが、『住宅情報誌が書かない コワ~い不動産の話』(別冊宝島取材班/宝島SUGOI文庫)だ。同書中の「首都圏・中古マンション騰落率調査(1997-2012) マンション資産価値が上がったエリア、下がったエリア 中古物件でも都心は値上がり、郊外では激落ち価格動向に二極化の動きが!」によれば、この直近1年に取引された中古マンションの価格を当該マンション新築時の価格と比較したところ、全エリア総合計では、新築時価格のほぼ2割減で取引されているのは2007年築の物件(-21%減)だ。つまり、7~8年前に建築された物件が、新築価格の8割で買えることになる。
ただし07~08年は、マンションが「新価格」「新新価格」といわれる割高価格で売られていたプチバブルの時期だった。新築時に割高であれば、当然中古になると下落幅が大きくなる。これだけ大きくマンション価格が下落しているということは、ローン残高とマンション価格を比較した場合、含み損になっているといえる。事実上、債務超過になっている世帯も多いのではないだろうか。当時、マンション購買層の中心だったのは現在の40代で、本来ならば消費の中心となるはずの世代だ。このような状況では、消費がなかなか伸びないのも致し方ないところだろう。
一方、03~05年築の物件は当時の新築価格が割安だったために下落幅が少なく、現在でも当時の8%減(03年)、8%減(04年)、9%減(05年)となっている。07年築以外で2割減となるのは、00年以前に建築された物件だ。
この調査では行政区ごとの騰落率も掲載されているが、その明らかな特徴は、中古マンションはそのエリアの人気不人気の影響を受けやすく、行政区でも格差が目立っているという点だ。例えば、00年築物件で見ても現在の中古価格は、全エリア総合計で19%減だったが、千葉市稲毛区は50%減と下落幅が大きい。一方で、東京都中央区は9%増だ。つまり、資産価値が購入時よりも上昇しているのだ。中央区は、築地市場の移転に伴う再開発や、東京駅周辺の再開発の影響もあり、高層・高級マンションが増えており、投資マネーが流れ込んでいるため、資産価値を大きく押し上げている。
同様に、資産価値がプラスになっているエリアは千代田区(5%増)、文京区(5%増)、港区(6%増)、目黒区(6%増)など、東京都心部エリアに集中しているのだ。