新型コロナウイルスの影響で中止になった2020年の春の甲子園、「第92回春の選抜高校野球大会(以下、センバツ)」。あれから1年、今年は2年ぶりにセンバツが復活する見込みとなっている。そしてその出場32校が決まる選考委員会が、今月29日に開催されるのだ。
そこで今回は一般選考で選ばれる28校と21世紀枠で選ばれる4校の計32校。果たしてどの高校が選出されるのか、選考委員会に先駆けて予想してみたいと思う。
まずは北海道地区からだ。この地区は一般出場枠が1枠。となれば、秋の北海道大会優勝の北海で決まりだ。初戦から4-0、7-1、10-0、6-0と圧倒的な強さで勝ち上がり。決勝戦では旭川実相手に1-0というロースコアの接戦を制して、見事優勝に輝いた。11年以来10年ぶり13回目のセンバツ切符が舞い込むこととなるだろう。
続いて東北地区。例年、一般出場枠は2枠なので、今回も秋の東北大会で優勝した仙台育英と準優勝の柴田という宮城県勢2校で決まり……といいたいところだが、実は柴田には不安要素が。というのも、決勝で1-18という大敗を喫してしまっているのである。さらに柴田は県大会準決勝でも同じ仙台育英相手に2-12のコールド負けを喫しており、印象が悪すぎる。
そこで浮上してくるのが、準決勝で仙台育英相手に0-1で惜敗した花巻東(岩手)だ。事実上の決勝戦ともいうべき試合内容だったうえ、地域性も加味されれば、逆転選出の目もさらに出てこよう。
ただ、柴田にもアピールポイントが。地区大会決勝で大敗した一因にエース・谷木亮太の先発回避があった。大会500球の球数制限により、先発することが出来なかったのである。さらに柴田は宮城3位で東北大会に進出しながら、八戸学院光星(青森)や東日本大昌平(福島)、日大山形といった県1位校3校を倒しての決勝進出という快挙を成し遂げている。しかも高野連の大好きな公立校で選出されれば初出場という話題もある。
議論が分かれるところだが、最終的には東北大会準優勝という実績も買われて、僅差で柴田が有利とみる。
関東・東京地区からは健大高崎、常総学院、東海大菅生など
次は関東・東京地区だ。一般出場枠は6枠で、確定は関東4枠・東京1枠となっている。そして最後の1枠を関東で5番手評価されたチームと東京で2番手評価されたチームの比較検討で争うワケだ。
となれば、関東大会優勝校の健大高崎(群馬)と準優勝校の常総学院(茨城)は確定。さらにベスト4でともにコールド負けしたものの、専大松戸(千葉)と東海大甲府(山梨)も順当に選出されるだろう。注目の5校目だが、準々決勝で唯一、1-2という接戦を演じた東海大相模が神奈川1位校ということもあって浮上してくるだろう。
かたや東京地区だが、これも優勝した東海大菅生は当確。だが、この東海大菅生に敗れ、準優勝に終わった日大三はそのスコアが1-6の大差だっただけに微妙だ。逆に東海大相模が選ばれれば、群馬、茨城、千葉、山梨、東京、神奈川と地域的にもバランスがよくなる。この点を考えても東海大相模が有利だろう。
東海地区は中京大中京、北信越地区は敦賀気比が確実
東海地区の一般出場枠は2枠。ここは地区優勝校の中京大中京(愛知)と準優勝校の県岐阜商で安泰だ。決勝戦が7-6という劇的なサヨナラ勝ちで決まったのに対し、準決勝で敗れた三重と岐阜第一はともに大敗を喫しており、可能性はかぎりなく低い。
東日本最後は北信越地区である。一般出場枠は2枠で、まずは決勝戦で16得点を挙げ、地区大会Vを勝ち取った敦賀気比(福井)は確実。問題は2校目である。準V校の上田西(長野)か、準決勝敗退組の関根学園(新潟)が当落線上に残っている。ともに敦賀気比に敗れたのだが、上田西は序盤から失点を重ね、同校に5-16と大差をつけられ、なすすべなく敗北を喫した。
その一方で関根学園は延長10回までもつれ込む大接戦。最後は4-5でサヨナラ負けを喫したが、終盤までリードする試合展開は評価されていい。さらに14年の第86回大会を最後に新潟県勢がセンバツから遠ざかっているのも追い風となる。北信越地区2校目は関根学園と予想。
近畿地区は大激戦、”6校目”は天理か龍谷大平安か
西日本の最初は、激戦区の近畿地区だ。一般出場枠は例年6枠。これにより、地区大会優勝の智弁学園(奈良)と準優勝の大阪桐蔭、そしてベスト4敗退組の市和歌山と京都国際は文句なしの選出となる。
残る2校は、通常ならばベスト8で敗退した4校の中から選ばれることを考えると、まず浮上するのが神戸国際大附(兵庫)だ。準々決勝で京都国際相手に5-6の1点差ゲームを展開。さらにベスト4組との地域性の面を考慮して、選出の可能性が高いのである。
問題は残る1校だ。智弁学園に3-8の龍谷大平安(京都)と市和歌山に0-2の智弁和歌山、そして大阪桐蔭の前に4-11の7回コールドで敗れ去った天理(奈良)である。この中でまず一番微妙なのは、智弁和歌山だろう。スコア的には0-2ともっとも接戦だが、市和歌山には県大会準決勝でも4-5で惜敗している。要は同じ相手に2度負けている点で印象が悪いのだ。
となると残る1校は、コールド負けを喫した天理よりは、近畿王者の智弁学園に3-8で屈した龍谷大平安か。5点差をつけられたとはいえ、7回終了時点では2-3と競った展開だった。そこから8回裏に決定的な5点を奪われて突き放されたワケだが、途中までの試合内容を考えれば一歩有利といえる。
では、天理に逆転の目がないのかと言われれば、そうでもない。確かに近畿大会では大差負けしているが、近畿覇者に輝いた智弁学園相手に県大会決勝で8-2と圧勝しているのである。要は実力的には申し分ないのだ。
龍谷大平安か、それとも天理か――。近畿地区の6枠目を巡って、当日の選考委員会はかなり紛糾するとみている。
中国・四国地区の5校目は鳥取城北?
続いては中国地区と四国地区。ここは2地区合わせて5枠で中国2・四国2が最初から確定している。つまり両地区の3校目に選ばれたチーム同士が最後に比較検討されるというシステムである。
そういう意味で中国地区はまず優勝校の広島新庄と準優勝校の下関国際(山口)は順当に当選。注目の3校目だが、準決勝で下関国際に0-12で7回コールド負けを喫した米子東(鳥取)よりは、広島新庄相手に3-4で惜敗した鳥取城北に軍配が上がる。
かたや四国地区もV校の明徳義塾(高知)と準V校の聖カタリナ(愛媛)は確定だ。残る3校目だが、鳴門(徳島)が明徳義塾に2-9の7回コールド負け。もう1校の小松(愛媛)が聖カタリナに延長12回、2-3のサヨナラ負けということで、小松が断然有利。
最後は、この小松と広島新庄の争いになると思われる。どちらも接戦で敗れ去っているだけに判断が難しいところだが、小松を選出した場合、愛媛から2校となるのがネック。逆に鳥取城北なら、地域性をみても広島、山口、鳥取、高知、愛媛とバランスが取れている。また、小松は愛媛3位というところも不利。以上のことから、中国・四国地区の5校目は鳥取城北が選出されると踏んでいる。
そして九州地区である。同地区の一般出場枠は4。ということで優勝した大崎(長崎)、準優勝の福岡大大濠、ベスト4に残った宮崎商と明豊(大分)でほぼ決まりだ。準決勝で敗退した2校はともに接戦負けで、しかも地域性にも偏りがない。選考は無風状態で終わるだろう。
21世紀枠、今年は特別に4校
最後は21世紀枠である。この21世紀枠はチームの成績が選考に反映される一般枠と違って、部員不足や練習環境の不備などの困難を克服したチームや文武両道で他校の模範となるチーム、ボランティアなどでその地域に貢献したチームなど野球以外の要素を選考条件に加えた特別枠のこと。さらに、原則秋季都道府県大会で16強以上(加盟129校以上は32強以上)の成績を収めていることも条件で、今回は以下の9地区から9校が今年のセンバツの21世紀枠候補に選ばれている。
・北海道…知内(北海道大会4強)
・東北…八戸西(青森県大会準優勝・東北大会8強)
・関東…石橋(栃木県大会準優勝・関東大会1回戦)
・東海…三島南(静岡県大会4位)
・北信越…富山北部・水橋(富山県大会4位・北信越大会1回戦)
・近畿…東播磨(兵庫県大会準優勝・近畿大会1回戦)
・中国…矢上(島根県大会4位)
・四国…川之石(愛媛県大会8強)
・九州…具志川商(沖縄県大会準優勝・九州大会8強)
例年なら21世紀枠からは3校が選ばれるのだが、今年は特別に4校が選出されることとなっている。東海・北信越以東の東日本(北海道~東海)と近畿以西の西日本から1校ずつを選び、残り2校は地域を限定することなく選ばれるという流れだ。
ただ、いくら21世紀枠とはいえ、最近では秋の地方大会での成績が加味される傾向がある。となると、県予選敗退組の三島南、矢上、川之石は苦しい立場に立たされる。さらに昨年は大会自体が中止になったものの、北海道から帯広農が選ばれており、知内の不利は否めない。
となると残りは5校となるワケだが、こうなると地区大会の成績以外の部分、すなわちユニークな取り組みや、いかに創意工夫を凝らしているか、がポイントとなる。
そういう意味でまず浮上するのが、北信越地区の富山北部・水橋連合チームだ。秋の新チームから学校再編の影響で県立統合校の連合チームとして始動し、練習時間の確保、調整などの困難を克服し、秋の県大会で4強入り。県内の連合チームとしては初めて地区大会出場を果たした。地区大会こそ初戦敗退を喫したものの、その相手が優勝した敦賀気比。しかも、0-5と善戦している点は大きく評価されると思われる。部員数わずか17人。連合チーム初となる甲子園出場という快挙が達成されることとなろう。
2校目は西日本から近畿地区の東播磨が浮上する。というのも、専用練習場がなく、コロナ禍という厳しい環境の中でSNSを使ってコミュニーケーションを図るなど、工夫した練習がまさにこのご時世ならで、高校野球の新たな指導スタイルとして注目を集めているからだ。
加えて県大会準優勝という実績を残したことも大きい。その戦いぶりも県大会3回戦では市立尼崎に2-1、準々決勝は育英に1-0で勝利と僅差のゲームを勝ち切ってきた。近畿大会は初戦で同4強の市和歌山相手に1-2で惜敗したものの、投手を中心とした守り勝つ野球、少ないチャンスを確実に得点に結びつけるスタイルはまさに高校野球の原点を感じさせてくれる。週2日は7時間授業があり、1日の練習時間が2時間以内の日も多いという文武両道校に吉報が届くに違いない。
3校目も西日本から。九州地区の具志川商と予想する。同校は県大会準決勝で強豪の興南相手に3-2の接戦勝ちを収め、続く九州大会でも初戦で熊本1位の東海大星翔に4-2で勝利し、ベスト8入りを果たした。
準々決勝では準優勝した福岡大大濠に敗れたものの、0-3という接戦を演じた。この成績だけで選出されてもいいのだが、具志川商がユニークなのは商業高校ならではの特性を活かした活動をしている点にある。地元品を販売する”具商デパート”で店長などの中心的な役割を担っているのが部員なのだが、要は商品の店頭配置など工夫を凝らして商売を勉強しているというワケだ。当然、商業簿記や情報処理検定などの取得にも力を入れており、まさに21世紀枠の理念に沿ったチームといえよう。
最後に残ったのは、東北地区の八戸西と関東地区の石橋。前者は県大会準優勝・地区大会8強で後者が県大会準優勝・地区大会初戦敗退と成績だけみれば八戸西が上回るが、最後の4枠目は石橋と予想する。というのも、野球部のグラウンドはサッカー部と共有で、外野守備やフリーバッティングも困難なうえ、十分な照明もないのだ。当然、練習時間も限られている。
そんな環境にもかかわらず、県大会準決勝ではひたすら磨いた機動力を武器に強豪の作新学院を破り、関東大会進出を決めている。初戦で神奈川1位の強豪・東海大相模に0-7の7回コールド負けを喫しているが、その健闘は十分讃えられるべきだろう。
また、同校は1924年に設立された名門校で県内でも屈指の進学校としても知られている。過去にはあの『高校生クイズ』(日本テレビ系)で優勝した実績もあるほど。文武両道を貫く石橋が21世紀枠で甲子園切符を掴みそうだ。
以上、今年のセンバツ出場校32校を予想してみた。吉報が届くのは、果たしてどの高校か。