ビジネスジャーナル > スポーツニュース > 阪神、CS進出も盛り上がらないワケ
NEW

阪神、大逆転でCS進出でも盛り上がらないワケ…脅迫めいた報道規制する傲慢体質

文=中村俊明/スポーツジャーナリスト
【この記事のキーワード】, ,
阪神、大逆転でCS進出でも盛り上がらないワケ
阪神タイガース公式サイトより

 開幕9連敗から大逆転でのクライマックスシリーズ(CS)進出――。

 今シーズン、出だしで躓いた矢野阪神タイガースだが、なんとかCSに進める3位へと滑り込み、さぞ球団内は活気に沸いているかと思いきや、現実はそうではない。スポーツ紙デスクが、次のように明かす。

「今季を通して球団内の雰囲気は良くなかったですね。終盤に追い上げて3位に滑り込んだのも、阪神が強かったというより、他のセ・リーグ球団が不甲斐なかった点が大きいでしょう。特に、報道陣と球団の関係は決して良好とはいえない状態が続きました」

 今シーズンのタイガースを語る上で、シーズン前に矢野燿大監督の今季限りでの辞任が発表されるという異例の人事は避けて通れない。番記者たちにとってシーズン中の結果もさることながら、来る新監督の人事、次期組閣メンバーなどをスクープすることが最大の関心事となった。

 ところが、である。球団は新監督人事などに関して、驚きの報道規制を敷いた。

「9月上旬、球団広報から新監督人事について、報道各社に自粛を求める連絡が一斉送信されたんです。さらに、それに従わない場合は、情報配信の停止、チーム関係者への取材の禁止、インタビューなどへの協力見合わせを通達し、実質的に締め出すことを匂わせる脅迫めいたものでした。番記者たちにとって監督人事は最大のスクープともいわれ、みなが狙う記事。それを矢野監督が辞任しておきながら、球団都合で取材をするなというのは、あまりにも身勝手です。その様子が『週刊文春』にリークされ、球団関係者は『どこが漏らしたんだ!』と激怒していましたね。

 近年は、以前では考えにくかった、そういう球団の横暴な体質が目立つのが残念なところです。反対に、読売ジャイアンツなどは昔から取材が難しい球団として知られていましたが、ここ数年でずいぶん緩くなりました。タイガースだけが時代の流れに逆行しているともいえます」(同前)

 そんなドタバタ騒動のなか、9月16日に岡田彰布氏の再就任が発表された。気になるコーチ陣については、藤川球児や鳥谷敬といった大物OBの登用も取り沙汰されている。スポーツ紙などに目を向けると、各社、ここぞとばかりに新人事について筆を滑らせている。それでも、ベテラン記者ほど現在の球団主導の人事について危機感を募らせているという。

「もともと、次期監督は平田勝男・2軍監督の昇格で調整されていました。ところが、阪急グループがこれに待ったをかけたのです。現在、阪神と阪急の力関係は逆転し、球団経営においても阪急グループに対して配慮している面が大きいのが実情です。阪急グループ会長である角和夫氏は、早稲田大学の後輩である岡田さんを推していました。阪急グループの子会社である阪神電鉄は、その関係に忖度したともいえます。

 コーチ陣についても、岡田さんの教え子たちの起用が予測されます。特に、いまだに根強い人気がある藤川球児を口説くことができれば、営業効果も大きいです。少なくとも、現在の“阪神ドラゴンズ”とも揶揄される陣営からは大きく変わるでしょう。ただし、フロント主導になりすぎて現場の意見が聞き入れられない状態は対立を生み、かつての阪神や、落合博満監督時代の中日ドラゴンズのように弱体化していくリスクも大きいはずです」(同)

 そんな独特のチーム事情について、OBたちはどうみているのか――。

阪神にはびこる悪しき慣習

 1990年代に活躍した阪神のあるOBは、今のチームは昔とはまったく別物だと断言する。その上で、関西におけるタイガースという球団の特別性について、次のように解説する。

「90年代の阪神はまだまだ弱くて、マスコミやファン、選手で一緒にタイガースを強くしていこうという雰囲気がありました。それが今の球団内部の話しを聞くと、『完全にフロント主導で息苦しい』という声も聞きます。あとは球団内でも派閥争いが大きすぎるのが難点です。実績があり、人気が高かったOBも複数控えているなか、まったく声がかからないOBがいるのは、派閥でコーチ人選を決めるからです。

 また、阪神ならではの“付き合い”も悪しき習慣でしょう。関西におけるタイガースブランドは強く、1カ月分の年俸よりも高い飲み代やタクシー代をタニマチにもらっていたこともありましたよ。現役時代に“おいしい思い”をしすぎて、引退後もまともな生活を送れないという選手も少なくありません。素行不良で選ばれないOBも多いですね」

 実際、このOBも、数多のそういった選手たちを間近で見てきたゆえに感じることがあるという。そして、そんな阪神OBという環境ゆえに、後の人生でも苦労している面があると続ける。

「他所の球団の選手なんかは引退後、しっかりと仕事を見つけ、一般社会に馴染んでいるケースも多くありますが、阪神はそういう選手が少ないように感じます。その最大の理由は、タニマチに世話になり、普通の感覚を失ってしまうからでしょう。仕事をしても、頭ひとつ下げられない奴も多くいます。飲食店経営や会社経営に乗り出し、それで失敗して、詐欺まがいの資金集めをしているという話すら聞きます。現役当時のエース格の投手や、主力だった野手のクラスですら、そんな声があるほどです。

 それを突き詰めると、阪神という球団にいたことで、いい思いをしてきたからでしょうね。正直、私も今だに当時のことを思い出して、『あの頃は楽しかった』と思うことがありますから」

 近年ではずいぶん球団としても、そういった外部との付き合いには抑止力を働かせているようだ、とOBは言う。ただし、「根っこの部分は変わらない」とも力を込める。

 そんな人気球団ゆえの傲慢体質に、新体制では心機一転してメスが入ればいいのだが。

(文=中村俊明/スポーツジャーナリスト)

阪神、大逆転でCS進出でも盛り上がらないワケ…脅迫めいた報道規制する傲慢体質のページです。ビジネスジャーナルは、スポーツ、, , の最新ニュースをビジネスパーソン向けにいち早くお届けします。ビジネスの本音に迫るならビジネスジャーナルへ!

関連記事