『AKB48総選挙公式ガイドブック2012』(講談社)
「総選挙の投票券の入ったシングルの発売を号砲に、派生ユニットのシングル発売、プロモーションビデオの公開、速報順位、そして前田敦子の引退時期の発表など、AKBネタが毎日といっていいほど取り上げられている。広告費に換算したらと思うと、アイコンとしての価値の高さがわかるというものです」とスポーツ紙の担当記者が説明する。
ところが、である。ある大手メディアだけが、総選挙の話題を報じていないことにお気づきだろうか。広告代理店社員が語る。
「AKBのメンバーがイベントに登場すれば、まず間違いなく総選挙に関する質問が飛び出しますし、スポーツ紙はもちろん、各局ともそれを報じます。私は仕事柄、各局の芸能ニュースをチェックしているんですが、あるテレビ局だけが総選挙に触れていないんです。それは、日本テレビです」
朝の情報番組である 『ZIP!』や『スッキリ!!』、夕方のニュース番組内の芸能ニュース枠など、日テレ番組内では相変わらず取り上げられることが多いAKBだが、「総選挙」の3文字は、どこにも出てこないという。
「日テレ局内で、『総選挙の話題は一切取り上げるな』という上層部からのお達しがあったそうです。日テレは、今年の総選挙の生放送を狙っていたのですが、ふたを開けてみればフジテレビ系で放送されることが決定した。そこで、『総選挙を取り上げることは他局の番宣になるから、まかりならぬ』ということになったようです。AKBがブレークする前から、積極的に取り上げ、レギュラー番組を持たせてきた日テレとしては、許しがたいんでしょうね」(前出の広告代理店社員)
昨年は、AKBのレギュラー番組内で総選挙の生中継を入れ込んだ日テレだったが、「その中途半端な取り上げ方に、AKB関係者は快く思っていなかったようですよ」と、前出のスポーツ紙担当記者が明かす。そして今年は、最大のライバル局が生中継することに……。
一極集中せず、出版でもテレビでもラジオでも、まんべんなく各メディアにAKBのネタは振り分けるというのが、秋元康・総合プロデューサーの意向のようで、その絶対的な方針は揺るがない。そんな、あまりにも巨大な利権となったアイドルグループに、大手テレビ局も”無視”という一手でしか抵抗できないということか。”国民的アイドル”と散々持ち上げておきながら、彼女たちによる”国民的行事”は黙殺する――なんともバランスを欠いた、公共の電波の担い手である。
(文=編集部)