こうした中、マイクロンはスマートフォン(高機能携帯電話)などモバイル向けのDRAMに活路を見出す。モバイル向けはパソコン用とは製造手法も異なり、付加価値も高い。量産レベルではサムスンが独走するが、エルピーダも技術を保有しており、マイクロンがエルピーダを傘下に収めたのも、この技術の取得が目的といわれる。ただ、アナリストの多くは「いずれキャッチアップされる技術。DRAM自体は枯れた技術であることは間違いない」と優位性に疑問を呈する。
米マ社はDRAM事業をエルピーダに集約したかっただけ?
エルピーダ争奪戦には、東芝やSKハイニックスも参加したが、最終入札前に離脱した。東芝関係者は「モバイル用DRAMを持っていれば、NAND(USBメモリなどに使用される高速記憶装置)と組み合わせて提供できるため商機の幅は広がる。それでもエルピーダのDRAM事業を丸抱えするデメリットのほうが大きい」と漏らす。韓国紙は「ハイニックスの入札は、マイクロンのNAND向けの経営資源を少しでも減らすための陽動作戦だった」と指摘する。つまり、落札価格をつり上げるための参加に過ぎず、DRAM事業が本当に欲しかったわけではない、ということである。マイクロンがモバイル用DRAMという短期的な利益に目がくらみ、ババを引いた可能性もある。
ただ、外資系アナリストは「マイクロンも中長期のDRAM衰退は予期しており、再建案にそれは見え隠れする」と語る。マイクロンの構想では、本体はスマホの記憶媒体に使うNAND型フラッシュメモリに特化し、DRAM事業はエルピーダに集約する方針を掲げている。もちろん、事業運営上生産性は高まるが、マイクロンは成長性が見込めるメモリに特化し、衰退事業であるDRAMをエルピーダに片寄せしたともいえる。「いつでも切れる」状態を整えたと見るのは勘ぐり過ぎか。
会社更生法手続きの再建計画提出期限は8月21日。再建の一歩になるのか、それとも将来の大リストラに向けた一歩となるのか――。
(文=江田晃一/経済ジャーナリスト)
<関連記事>
エルピーダ、倒産の裏で、銀行・市場を欺いていた!?
エルピーダ支援先内定(?)も、台湾工場以外は大量リストラか?
エルピーダ身売りの舞台裏