なぜあのベンチャーは、スタバから高額出資を受けられたのか?
現在のソーシャル × モバイル化へと続くWeb2.0時代の到来をいち
早く提言、IT業界のみならず、多くのビジネスパーソンの支持を集めているシリアルアントレプレナー・小川浩氏。そんな“ヴィジョナリスト”小川氏が、IT、ベンチャー、そしてビジネスの“Real”をお届けする。
最近僕が気になっているスタートアップの一つに、米国Squareというモバイル決済サービス提供企業がある。
創業者兼CEOは、ジャック・ドーシーという。日本人には、Twitterの共同創業者の一人であると言ったほうが通りが良いだろう。現在、彼はTwitterの会長を務めている、というよりも、Twitterのオリジナルアイデアは彼が創出したとされており、Twitterのプロトタイプはドーシー自身でプログラミングしたものらしい。
シードマネーが集めやすい時代
Squareは、現在30億ドル以上の評価額を受けたうえで、2億ドル近い資金調達に成功している。日本のスタートアップには、決してあり得ない夢のような数字である。拙書『ネットベンチャーで生きていく君へ』(http://www.amazon.co.jp/dp/4534049455/ref)でも書いたが、いま世界的な兆候として、起業する際に当面必要となるシードマネー自体は非常に集めやすくなっている。しかし、その次に思い切ってアクセルを踏んでいきたいときの、より大きな資金需要に対するベンチャーファンドの財布の紐が、驚くほど古くなっている。
学生などが親元で暮らし、生活コストを極力低くしていれば、今ほど起業しやすく、数百万円の資金ならばすぐに集まるようになっている時代もないと思うのだが、半面、数千万円から数億円の資金獲得は非常に難しくなっている。
つまり、投資する側からすれば、スタートアップは多産多死でよく、激戦を勝ち抜いた少数の成功者だけが次の大型の資金調達にたどり着けばいい。なぜなら、初期投資に振る資金が1億円あったとして、それを500万円ずつに分ければ20社に投資できる(1/20=5%)。20社中1社が投資額の25倍の評価額で大型資金調達に成功すれば、500万円が1.25億円になり、2500万円の儲けになる。実際にはもう少し長い目で見ればより確率はいいし、倍率ももっと上になることも多い。例えば、Facebookが買収したInstagramは創業からM&Aまでたった2年、その間で評価額はなんと300倍だ。
出口戦略への執着
起業したての企業の財源をシードマネーと呼び、その資金調達をシードラウンド、またはエンジェルラウンドという。エンジェルとは、創業間もない企業に対し資金を供給する裕福な個人投資家を指し、シードラウンドでの出資を引き受ける投資家の多くがエンジェルであることが多いことから、シードラウンドを別名エンジェルラウンドとも呼ぶわけだ。
シードラウンドの次はエンジェルではなくVC(ベンチャーキャピタル)からの投資を募る、ベンチャーラウンドに入る。ここからは出口戦略(IPO、M&Aなど)を実行するまでに数回の増資を行うことが普通なので、それらを初期段階から数えてシリーズA、シリーズB、などという。シードラウンドからシリーズAまでに、どれだけ企業価値を向上させることができるかが、起業家としての大きな関門になるわけだが、前述のSquareは創業以来3年間でシリーズD(都合四回目の大型投資)の資金調達を成功させている。