食パンの山崎が、セブンやローソンのPB生産に積極的なワケ
ところで、これまでのわが国におけるPBブームは、不況期に咲くアダ花みたいなもので、好況の到来と共に去り、結局、消費者は大手メーカーのNB(ナショナルブランド)に戻っていくという繰り返しだった。
しかし今回のPBブームは違う。昨年の東日本大震災による復興特需を契機にした、明らかな消費回復基調の中にあって、PBはしぼむどころか、ますます隆盛をきわめている。
その背景として、食品メーカーや日用品メーカーなどを主体に、業界でシェアトップの大手メーカーが、積極的に流通系PBの生産に取り組む動きが挙げられる。たとえば食パンなら、業界首位の山崎製パンが、セブンプレミアム(セブン&アイ・ホールディングス)、ローソンセレクト(ローソン)、スタイルワン(ユニー、イズミヤ、フジ)、スマイルライフ(ライフコーポレーション)といった有力PBの生産をかけ持ちで手掛ける、といった具合だ。
要はそれにより、PBの品質と機能、味が以前より格段に向上しており、消費者もそれを認め始めているのだ。
なぜ大手メーカーがPB生産に乗り出してきたのか?
それではなぜ大手メーカーが、これまで敬遠気味だった流通系PBの生産に、まるで手のひらを返したように、乗り出してきたのだろうか?
その背景には、小売とメーカーの再編スピードの違いがあるとされる。つまり、近年、イオンやセブン&アイ・ホールディングスなどの小売大手は、相次ぐ再編やM&Aによって市場寡占度を強めてきた。それに対して、メーカーは自社ブランドへのこだわりもあり、再編はほとんど進んでいない。その差が、市場成熟化で全体パイが縮小する中、買い手としての小売優位な状況を、急速に強めているのだ。
とはいえ、欧米諸国に比べれば、わが国のPB浸透度はまだまだ低い。大手スーパーのPB比率は、高いところでも10%前後にとどまる。対する英首位のテスコ、仏首位のカルフールなどでは、そのシェアは50%にも達するといわれる。
そうしたことからも、わが国でPBがさらに成長するのは間違いなさそう。今後は、食品、日用品のみならず、衣料、住関連、さらには余暇関連商品へとPBの部門拡大が進みそうだ。
(文=月泉博/シーズ代表取締役)