元日に石川・能登地方を震源とする最大震度7の地震が発生し、「令和6年能登半島地震」と名付けられた。その余震はいまだに継続しており、北陸地方では予断を許さない日々が続いている。被災者には心よりお見舞いを申し上げ、行方不明者が一刻も早く救出されることを祈るしかない。
被災地に対し、救援物資が送られる様子もさまざまなメディアで報じられている。もちろん、今後もまだまだ必要な物資はあるだろうが、日本では災害時における支援が迅速に行われる傾向があるように思われる。
そんななか、石川県の公式X(旧ツイッター)が、「国等からの緊急物資を皆さんのもとへ一刻も早くお届けできるよう、産業展示館で発送作業を進めています。自衛隊の皆さんご協力ありがとうございます。個人からの義援物資は、受け入れ態勢の準備中です。準備でき次第、県HPなどでご案内いたします」と投稿し、救援物資が被災地に運び込まれる様子を動画付きで投稿した。
その動画では、山崎製パンのトラックから自衛隊員が大量のパンを運び出す様子が映っており、SNS上では山崎製パンを称賛する声が殺到している。
そこで、Business Journal編集部は山崎製パンの広報部に、災害時における支援体制などについて話を聞いた。
――迅速に自衛隊と連携して被災地に食糧支援を行った報道があるが、普段から協力体制をつくっているのでしょうか。
広報担当者「ネット上の情報にミスリードがあるように思えます。そもそも今回は、農林水産省から、業界団体であるパン工業会に対して食糧支援の要請があり、加盟している大手メーカーはそれに応えるかたちで食糧支援をしています。弊社だけがパンを提供したわけではありません。ですから、自衛隊と連携しているわけでもありません」
――御社を称賛する声が上がるのも、災害時にパンを提供するといった過去の実績があるからだと思いますが、普段から緊急時には躊躇なく食糧支援を行うといった社内ルールなどがあるのでしょうか。
広報担当者「普段から災害時を想定したルールなどがあるわけではありません。その時々に応じて、社内で検討して判断を下しています」
――例えば、2014年2月に山梨県で大雪が降った際、中央自動車道で立ち往生した御社のトラックに搭載していたパンを、同じく道路上で立ち往生している車列のドライバーたちに提供したことが話題になったことがありますが、現場の判断というわけではないのですね。
広報担当者「もちろんです。会社組織ですし、トラックに積んでいるパンも個人の物ではないので、ドライバーからしかるべき部署に相談が入り、本社で判断してから提供しています」
ヤマザキパンは公式サイトで「大規模災害時の緊急食糧支援」について、「大規模災害の発生に際して、被災地への緊急食糧の供給を行うことは、食品企業としての当社の社会的使命と考えています」として、自社の立場を公表。
さらに、「平成23年に発生した東日本大震災はもとより、それ以前の阪神・淡路大震災や新潟県中越地震、最近では熊本地震や北海道胆振東部地震等においてもお取引先様である販売店への納品と並行して緊急食糧の供給に全力で取り組み、避難を余儀なくされた方々に、パンやおにぎり、飲料等の救援食糧をお届けしてきました。これからも食生活の一端を担う企業としてしっかりとその使命を果たせるよう緊急食糧供給体制の整備に努力を重ねてまいります」と説明している。
一部の報道やSNSで騒がれているように、山崎製パンが独自に被災地へ食糧支援をしていたわけではなかったが、食品メーカーとして被災者に対して食糧を届けようとしている姿勢には敬服する限りである。
(文=Business Journal編集部)