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IGPIパートナー塩野誠「The Critical Success Factors Vol.4」

高給を払わないでも“超”優秀な人材に働いてもらう方法とは?

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●楽しい「場」の創出は人材コストを下げる

 私はいくつかの新興企業を経験してきましたが、米国人がよく「ロケットサイエンスじゃないよ」というように、高度先端科学技術や国宝級の職人の分野は別として、たいていのホワイトカラー文系事務仕事は誰でも「やればできる」と思っています。

 例えば、昔のライブドアでは企業投資や買収を小さな案件であればアルバイトにやらせて、後で「あれ、お前バイトだったの?」とか言っていました。某200億円の買収案件の担当者は、当時26歳くらいだったように記憶しています。彼は買収対象会社の社長に「こんな優秀な26歳が存在するのか!」と驚愕されており、買収スキームの構築も銀行団との交渉もやっていました。

 余談ですが、26歳の若手が担当して買収された企業は、その後700億円以上で売却されました。当たり前ですが、そんな若者たちも最初から何かできたわけではなく、企業価値を評価するのも、「本を読んでエクセルで計算しろ」と言われ、契約書をつくるのでも、「会社法の条文にあたって自分でつくれ」と言われてやっていたので、最初からそういうものだと思えば、誰でもやればできるものです。

 前述のライブドアのケースは極端な事例ですし、そんないい加減なことだから破綻に向かったんだと言われれば返す言葉もありません。一方で、楽しい場所と責任を与えれば、たとえピカピカの経歴の持ち主でなくとも、私の経験では、仕事で活躍してくれるものですし、下手なプライドがない分、伸びることもあります。「学生サークルのノリ」と揶揄されるような場所がつくれれば、高い給料を払わなくても従業員は働いてくれるように思います。無論、それは搾取の一形態と言う方もいるとは思いますが。

●「ムラ」としての会社共同体

 ある意味、社歴の短い企業のほうが、「ムラ」としての会社共同体をつくるのに熱心です。会社から近いところに住むと奨励金が出る、週末も会社の同僚と遊ぶといった文化は、古き良き「ムラ」づくりに寄与します。例えば、大企業でも独身寮を復活させるといった動きがあります。ベタベタした人間関係が嫌いな人にとってはブラック企業扱いでしょうが、一つのやり方ではあります。

 高い給与だけで社員のロイヤリティを保とうとすると、コストは増えますが、「会社は楽しい場」という環境の醸成は人材コストを低減します。若者たちが日系企業に回帰し、社員寮で学生サークルのノリで暮らすのは、なんだかノスタルジックな光景ではありますが、会社というムラへのロイヤリティは増し、人材コストは下げられるでしょう。

 そこで集まった人材に権限を委譲して、責任ある仕事をどんどんやってもらい、収益を上げてもらう。それは非現実的でしょうか?

 一部の企業では実現していますし、高い給与を払わずとも「場」を与えることができれば、優秀な人を惹き付けることはできることと思います。

※本稿は筆者個人の意見であり、所属する団体等の見解ではないことをご了承ください。

塩野誠(しおの・まこと):経営共創基盤 パートナー/マネージングディレクター
ゴールドマン・サックス証券を経て、評価サイト会社を起業、戦略系コンサルティング会社のベイン&カンパニーを経た後、ライブドアにてベンチャーキャピタル業務・M&Aを担当し、ライブドア証券取締役副社長に就任。現在は経営共創基盤(IGPI)にて大企業からスタートアップまで、テクノロジーセクターの事業開発、M&Aアドバイザリーに従事。著書に『プロ脳のつくり方』(ダイヤモンド社)、『リアルスタートアップ』(集英社)がある。慶応義塾大学法学部卒、ワシントン大学ロースクール法学修士。