●名札をつけなくなった子どもたち……
地域によって多少の違いはあるかもしれないが、今、小中学校の生徒が胸に名札をつけて校外を出歩くことはない。都市部では、もはやこれは常識だ。
少なくとも10年くらい前までは、この年代の子どもたちは、必ず学校名と学年・組を示した名札をつけていたものだ。しかし今、彼らの胸元には名札はついていない。その理由について神戸市教育委員会に尋ねると、次のような回答が返ってきた。
「不審者対策のため、に尽きます。名札、すなわち実名とは重要な個人情報。不審者が児童・生徒の実名を知ることで、なにがしかのとっかかりとなり、性犯罪をはじめ、さまざまな犯罪、不審事案を起こすことを未然に防ぐため」(神戸市教育委員会)
例えばAという児童の実名を不審者が知ったとしよう。これにより学校側に「Aという児童の知り合いです」などといってAに近づく。あるいは不審者が接触したいターゲットがBという児童であった場合、Bという児童に「Aちゃんのおじちゃんだけど、ちょっと一緒に遊ぼうか」などと言い寄ってくる可能性がある。
そうした予測される犯罪を未然に防ぐため、実名という「重要な情報」を秘匿する目的で、校外では名札をつけないように厳しく指導しているのが、現在の小・中学校の実情だ。
●セキュリティへの意識は小学生以下…
ところが「潜水艦の町・神戸」にて、三菱重工業や川崎重工業の造船所付近を歩いていると、時折、作業服姿の海上自衛隊員と出くわすことがある。その際、必ず胸元についているのが実名をフルネームで示した名札だ。
【海上自衛隊員の名札】
(艦名) | (職種)
ーーーーーーーーーーーー(色付のライン)
(実名)
この名札の意味は、所属している部隊が左上、右上に職種、そして実名がフルネームで記載されている。上下を2分する色付きのラインは、所属する分隊【編註:幾つかの職種を束ねた艦内組織。陸上自衛隊の中隊に当たる組織】を示すものである。赤色なら1分隊、黄色なら2分隊、青色なら3分隊といった具合だ。
布地で縦5cm・横10cm程度の大きさで、結構遠くからでも何が書かれているか識別可能な大きさだ。現役海上自衛隊幹部A氏によると「そもそも艦内で遠く離れた場所からでも識別しやすいよう、それくらいの大きさにしているのではないか」という。
●潜水艦乗員もFacebook上に実名で書き込み
さて、神戸にある造船所付近で、筆者が偶然見かけた潜水艦乗員について、名札に書かれた名前をFacebookで検索すると見事にヒットした。Facebook上のプロフィールには、「防衛省・海上自衛隊」という勤務先のほか、卒業した高校まで経歴が丁寧に記載され、投稿には自らのものと思われる顔写真も含まれている。