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大塚将司「【小説】巨大新聞社の仮面を剥ぐ 呆れた幹部たちの生態<第1部>」第11回

大手新聞社幹部、取材しない、記事は書けないが不倫はお盛ん

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「Thinkstock」より
※前回連載はこちら
新聞社出世の条件…平凡、醜聞、窃盗、ごみ箱漁り?

【前回までのあらすじ】
ーー巨大新聞社・大都新聞社は、ネット化を推進したことがあだとなり、紙媒体の発行部数が激減し、部数トップの座から滑り落ちかねない状況に陥った。そこで同社社長の松野弥介は、日頃から何かと世話をしている業界第3位の日亜新聞社社長・村尾倫郎に、以前から合併の話を持ちかけていた。そして基本合意目前の段階にまで来たある日、割烹「美松」で密談を行う松野と村尾、加えて事情を知らずに姿を現した両社の取締役編集局長、北川常夫(大都)と小山成雄(日亜)。そこで2人は、合併に向けた具体的な詰めを極秘裏に進めるよう指示されたのだったーー。

 日亜新聞社長の村尾倫郎は口元に皮肉っぽい笑みを浮かべながらも、大都新聞社長の松野弥介に向かってへりくだった調子で答えた。

「そうでしょう。大都さんはずっと部数トップですからね。大都さんには『他紙がいくら記事にしても、自分が書くまではニュースじゃない』という気風があるそうですけど、うちは恥も外聞もなく、スクープを追いかけて這い上がってきたんですから。でも、今は違います」
「どう違うんだ?」
「経済ニュースの7〜8割は、うちがスクープしています。もうごみ箱漁り(記者クラブの他紙のごみ箱に入っている書き損じの原稿用紙を漁り、他紙がどんな記事を書いているのか探ること)の伝統なんてないですよ。4半世紀前までの話です」
「村尾君は伝統で成果を上げたことはあるのかね。富島君に、記事がまったく書けない記者だったと聞いているけど……。うちの北川(常夫・大都編集局長)と同様にな」
「ごみ箱漁りはやりました。『盗み』はノーコメントです。そんなこと喋ったら、また『S』(=スキャンダル)が増えちゃう。でも、私の同世代の記者で、資料を盗もうとして職員に捕まりそうになった奴がいました。今、どこにいるか、知りませんけど。やはり『KY』(=器用で要領のいい奴)は大事です」
「変なところで、自分のつくったキャッチフレーズを売り込むんだな」
「いやそうじゃないんです。うちの小山(成雄・日亜編集局長)は『KY』そのものなんです。業界紙に載った情報を少しだけ補強取材して大きな記事にでっちあげるのが得意なんですよ。そうだな」
「ええ、まあ……」
「そんな変なほめられ方されても、答えようがないよな。『伝統』のほうはどうなんだ?」
「さっきも言いましたけど、ごみ箱漁りはやらされました。でも、盗みはやっていません。僕らが現役の時代は、官庁の報告書があまりありがたがられなくなり始めていたんです。費用対効果を考えると、盗みなんてばかばかしくてって感じでした」
「北川君、そうかい?」

 松野は首をかしげながら、脇に座っている自分の部下を見た。「伝統」がなくなったと言わんばかりの小山の説明が、納得いかなかったのだ。

「そうですね。官庁の報告書を事前に入手しても、大きな記事にしてもらえなくなり出していました。そうなると、盗みなんかしなくても、相手が『大きく取り上げてくれ』と持ち込むようになっていました。僕なんか、それを請け負って、資料をもらってきて同僚に記事を書いてもらう。これが僕のKYですかね」

 北川の答えを聞いて、松野は頷いた。

「そうだったな。君は、1年下の社長室長の平山久生君と2人で1人前と言われていたな。平山は取材力はからっきしだけど、こっちの言うことを適当にうまくまとめるのだけは得意だった」

●取材が嫌いな新聞記者

 松野と北川のやり取りを聞いていた小山がクスクス笑った。