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大塚将司「【小説】巨大新聞社の仮面を剥ぐ 呆れた幹部たちの生態<第1部>」第10回

新聞社出世の条件…平凡、醜聞、窃盗、ごみ箱漁り?

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「Wikipedia 」より
※前回連載はこちら
『大手新聞社、紙の発行部数は水増し、ウェブ版は水減らし!?』

【前回までのあらすじ】
ーー巨大新聞社・大都新聞社は、ネット化を推進したことがあだとなり、紙媒体の発行部数が激減し、部数トップの座から滑り落ちかねない状況に陥った。そこで同社社長の松野弥介は、日頃から何かと世話をしている業界第3位の日亜新聞社社長・村尾倫郎に、以前から合併の話を持ちかけていた。そして基本合意目前の段階にまで来たある日、いつものように割烹「美松」で密談を行う松野と村尾に呼ばれ、事情を知らずに姿を現した両社の取締役編集局長、北川常夫(大都)と小山成雄(日亜)。そこで2人は、合併に向けた具体的な詰めを極秘裏に進めるよう指示されたのだったーー。

 日亜新聞編集局長の小山成雄は順番に取り皿を受け取り、煮立った鍋の具を入れ始めると、大都新聞編集局長の北川常夫が口を開いた。

 「社長。さっき、『3つのN』『2つのS』とか言いましたけど、それってなんですか?」
 「俺が日亜の富島(鉄哉)君が引責辞任する前にアドバイスした話ね」
 「そうですよ。さっき、話がとぎれちゃったじゃないですか」
 「君に話したこと、なかったか。結構、いろんな奴に話しているんだけどな」
 「聞いていませんよ」
 「『3つのN』は『可もなし、不可もなし、実績もなし』ということ。『2つのS』は『シークレット(秘密)、スキャンダル(醜聞)』さ」
 「いくつのなんとかって、社長の得意技ですね。挨拶や講演でよく使いますけど、これはなんですか。小山さん、わかるかい?」

 小山が首を振った。

 「わかるだろう。どうしてわからないんだ。君たちの今があるのは、この哲学のおかげじゃないか。村尾君、説明してやれよ」

 松野はお湯割りのグラスに手を伸ばし、舐めるように焼酎を飲みながら待ったが、村尾は笑って何も答えない。しびれを切らした松野が続けた。

 「しょうがねえな。人事で引き上げる奴の条件さ。『3つのN』は平平凡凡の記者を選べ、という意味。優秀な記者や実績のある記者は目ざわりだし、自分より人望集めたりしては困るからな」
 「『2つのS』は秘密や醜聞のある奴を選べ、ですか」

 大都の北川でなく、日亜の小山が割り込んで、意味ありげに村尾をみた。

 「富島君が2つの条件に合致する後継者として選んだのが村尾君だ。そうだよな」

 松野はニヤッとして村尾を見た。

 「若い人の前で、そんなことは言わないでくださいよ」
 「いいじゃないか。うちも日亜も中枢にいるのは全員、『3つのN』『2つのS』に合致しているといってもいいぞ。うちの烏山凱忠(からすやまよしただ)相談役は言わずもがなだけど、富島君も若い頃にいろいろあったらしい。『村尾君には大分助けられた』と言っていた」
 「その話は駄目ですよ。今、富島は名門の霞ヶ関カンツリー倶楽部の会員になって大喜びなんですから。週1回か2回通ってゴルフ三昧です。志木市の自宅から近いんですよ。寝た子を起こすようなことはしないでください。合併の話も、まだしていないんですから」
 「俺だって同じだ。烏山にまだ言っていない。でも、心配はいらんがね。富島君は俺と同い年で、まだ現役気分が抜けきらんかもしれんが、俺が話せば、文句は言わんさ」
 「そうかもしれませんが、余計なことは言わないでくださいよ」
 「わかった。わかった」

『ひもくるりん』


古新聞を縛るときにはこれで!

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