新聞社出世の条件…平凡、醜聞、窃盗、ごみ箱漁り?
霞が関の官庁には、こんな牧歌的な雰囲気が昭和50年代まで残っていたのである
●ごみ箱漁りという伝統
「僕たちが入社した頃は、まだ役所の資料を盗む伝統があったかもしれませんが、支局勤務から本社経済部に上がってきた頃は残滓みたいな伝統があったくらいですね」
日亜の小山が答えた。村尾は合併時の昭和45年入社、日亜第一期生であるが、小山は昭和50年(1975年)入社で、旧日々時代の「防衛庁公電窃盗スクープ事件」のことなど、よく知らないのである。
「残滓みたいなの、って何だ?」
大都の松野が突っ込むと、小山が応じた。
「それはごみ箱漁りです。記者クラブのごみ箱、それも他紙のところのごみ箱に入っている書き損じの原稿用紙を漁るんです。大都さんのごみ箱も漁りましたよ」
「そんなことしていたのか。書き損じの原稿用紙を読んで、他紙がどんな記事を書いているのか探るんだな」
「そうです。それで抜かれているようなら、同じ中身の記事を突っ込むんです。これはキャップに何度もやらされましたね」
「村尾君、君のところはごみ箱漁りの伝統まであるのか。いやしいよな。うちはそんなつまらない『抜いた、抜かれた』の競争はしないのが伝統だ」
今度は火の粉が村尾に飛んだ。
(文=大塚将司/作家・経済評論家)
※本文はフィクションです。実在する人物名、社名とは一切関係ありません。
※次回は、来週12月22日(土)掲載予定です。
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