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大塚将司「【小説】巨大新聞社の仮面を剥ぐ 呆れた幹部たちの生態<第1部>」第8回

大手新聞社、取材メモ捏造事件でトップ辞任!?

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「Wikipedia」より

※前回連載はこちら
『大手新聞社、広告出稿の見返りにサラ金批判を封じる密約?』

【前回までのあらすじ】
ーー巨大新聞社・大都新聞社は、ネット化を推進したことがあだとなり、紙媒体の発行部数が激減し、部数トップの座から滑り落ちかねない状況に陥った。そこで同社社長の松野弥介は、日頃から何かと世話をしている業界第3位の日亜新聞社社長・村尾倫郎に、以前から合併の話を持ちかけていた。そして基本合意目前の段階にまで来たある日、いつものように割烹「美松」で密談を行う松野と村尾に呼ばれ、事情を知らない両社の取締役編集局長、北川常夫(大都)と小山成雄(日亜)が姿を現したのだったーー。

 政治は、政治家たちが権力を目指し権謀術数の限りを尽くす場である。その実態をより正確に伝えるには、各政党の枢要な政治家たちの話を聞く必要がある。記者たちの取材結果はメモにされ、記事を書くキャップに届けられる。キャップは自分の独自取材と、他の記者が集めた情報をもとに、実態について自分なりの見方をまとめることがままある。

 ジャーナリズムは一人の記者が取材し、リスクを一人で負って記事にするのが本来のあるべき姿である。だが、テーマによっては一人でなく、グループで取材、実態に迫るしかない事象もある。だから、大手新聞社の政治部が部下の記者たちを使い、メモを上げさせ、それをもとにキャップが記事をまとめる手法が生まれた。それ自体が問題なわけではない。過程を伝える意味では、この手法を取るほうがより実態に肉薄できることが多い。

 しかし、最近では、この手法は経済部や社会部にも広がり、若い記者の間ではメモを作れば仕事は終わり、という意識が年々浸透、弊害も目立ち出している。いいメモを上げているかどうかが評価の対象になるためだ。

 メモは、読者の目にさらされる記事に責任を持つわけではない。たまたま、夜回り取材が空振りに終わっても、日頃の取材で聞いた話をメモにして取材したように装う不心得者も出てきて当然なのだ。それがばれずに済み、キャップの書きたい記事に都合がよければ、評価は上がる。政治記者として本流の取材現場を歩み、将来の政治部長の芽も出てきたりする。仮にばれても問題にならなければ、要領のいい奴、という評価になる。

 ところが、運の悪い奴も出てくる。大抵、政治家というのはアバウトで、批判されていない限り、事実かどうかは二の次で、記事に取り上げられれば喜ぶ。しかし、中には変人もいる。共生党(きょうせいとう)党首の鈴木恭志(やすし)がそうだった。

 当時は、保守本流の自由党を中核に公民党、共生党の2党が政権に参加する3党連立政権が、衆参両院で過半数をかろうじて守っていた。宗教団体を支援組織とする公民党は衆参で40名の議員を抱える中政党だったが、共生党は衆議院3、参議院2の、わずか5名の弱小政党だった。共生党は野党第一党の民社党の党首選挙のしこりで離党した議員が結成した政党で、政権奪還を目指す民社党が共生党に政権離脱を働きかけていた。そんなとき、日亜新聞朝刊が大ぶりの囲み記事で、政権離脱をめぐる駆け引きを取り上げた。

 記事に「党首の鈴木が記者に対し『明日が山場だ。今日はまだなにも決まっていない』と語った」と書かれていたが、当の鈴木が「記者には誰にも会っていない。なぜ、こんなコメントが載るんだ」とねじ込んできたのだ。

 慌てた日亜が社内調査をしたら、若い政治部記者が鈴木に会えなかったのに、会ったことをねつ造したメモを上げていたことがわかった。これが「取材メモねつ造事件」である。

●トップ人事の番狂わせ

 記事の中身自体が政局に影響を及ぼすようなことはまったくないので、鈴木がねじ込まなければ問題なることはあり得なかった。だが、問題になってしまうと、張り子の虎とはいえ「言論報道機関」を標榜する以上、その根幹を揺るがす事態になる。事実をねつ造した証拠となり、「言論報道機関」の印籠が使えなくなる。

 「サラ金報道自粛密約事件」に続く不祥事で、日亜はトップの引責辞任で事態を収拾するほかなくなるところに追い込まれた。6代目社長候補の正田幸男(編集担当専務)も富島鉄哉(社長)と一緒に引責、合併後の日亜入社の年次から後継社長を選ぶことになったのだ。

 「『サラ金報道自粛密約事件』は社長だった富島君の責任だけど、『取材メモねつ造事件』は第一義的には編集担当専務の正田君の責任だ。2人が一緒に引責して、なんの不思議もないぜ。どんな噂が流れていたんだ? 小山(成雄・日亜編集局長)君」

『なかぎし 敷き毛布』


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