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大塚将司「【小説】巨大新聞社の仮面を剥ぐ 呆れた幹部たちの生態<第1部>」第7回

大手新聞社、広告出稿の見返りにサラ金批判を封じる密約?

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「Thinkstock」より

※前回連載はこちら
カネでOBを買収し、合併を目論む巨大新聞社を阻む“事情”

【前回までのあらすじ】
ーー巨大新聞社・大都新聞社は、ネット化を推進したことがあだとなり、紙媒体の発行部数が激減し、部数トップの座から滑り落ちかねない状況に陥った。そこで同社社長の松野弥介は、日頃から何かと世話をしている業界第3位の日亜新聞社社長・村尾倫郎に、以前から合併の話を持ちかけていた。そして基本合意目前の段階にまで来たある日、いつものように割烹「美松」で密談を行う松野と村尾に呼ばれ、事情を知らない両社の取締役編集局長が姿を現したのだったーー。

「お見えになりましたよ」

 割烹「美松」の老女将が格子戸を開けた。唐紙を開けて入ってきたのは、大都新聞社と日亜新聞社の取締役編集局長の2人だった。北川常夫と小山成雄(しげお)である。

 2人は部屋に入るなり、顔を見合わせた。一緒に入った老女将が怪訝な顔をした。

「どなたがいるのか、ご存じなかったのですか。変なんですよ、このお2人」
「女将、何が変なんだい?」

 大都新聞社長の松野弥介が笑い声で問い返した。

「いえね。最初に硝子戸を開けたのは、こちらの方でした」

 老女将が向かって左手で呆然としている北川に手を向け、続けた。
 
「このお方が上がり框(かまち)に上がろうとした時、また硝子戸が開いたんです」

 老女将は、北川の右隣に佇む小山に手を向けた。

「顔を合わすなり、それはびっくりで、『あ!』と言ってお互いを指さしたんです」
「そうか、やっぱりな。おい、村尾君、想像通りだったな」

 対面の日亜社長の村尾倫郎が含み笑いをして頷くと、松野が2人に声をかけた。

「おい、はやく席に着けよ。北川は俺の隣、小山君は村尾君の隣に座れや」

 2人が指定された席に着くと、老女将はまだ腑に落ちない顔つきで、遠慮がちに聞いた。

「なんだかよくわかりませんけど、もう料理を出していいんですね?」
「もちろんさ。それにビール2本。そうだ、君たちは何を飲む? 遠慮せずに言え」
「最初はビールでいいです」
 
 北川が向かいの小山に目をやり答えた。

「これから、ちょっと重要な話があるから、日本酒党の村尾君に熱燗2本、それに焼酎のボトル1本。お湯割りにするから、お湯と梅も。それだけ先に持ってきてくれ」
「まあ、そんなに一遍に持ってこられませんよ」

 老女将が笑いながら部屋を出て行った。

「一体何なんですか?」
 
 北川が松野と村尾の顔を窺うよう交々見た。

「まあ待て。酒と料理が来てからだ。さっきのビールが残っているだろ。先ず一杯やれ」