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大塚将司「【小説】巨大新聞社の仮面を剥ぐ 呆れた幹部たちの生態<第1部>」第5回

巨大新聞社、外部からのチェックゼロで社長のやりたい放題!?

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「Thinkstock」より

※前回連載はこちら
『巨大新聞社を揺るがす株事情、マスコミは見て見ぬふり…』

【前回までのあらすじ】

ーー巨大新聞社・大都新聞社は、ネット化を推進したことがあだとなり、紙媒体の発行部数が激減し、部数トップの座から滑り落ちかねない状況に陥った。そこで同社社長の松野弥介社長は、日頃から何かと世話をしている業界第3位の日亜新聞社社長・村尾倫郎に、合併の話を持ちかけていた。しかし、基本合意を目前に控え、事務的な詰めに入ろうとしたところで、急に合併に後ろ向きな姿勢を見せ始めた村尾。その背景には、一般企業では考えられないような、新聞業界独特の経営事情があったーー。

「お待たせしました。ようやく料理が届きました」

 老女将は村尾の奥まで進み、ビール瓶を入れた籠から一本取り出し、栓を抜いた。「さあ、お一つ、どうぞ」と言って、2人のグラスのお酌をした。2人が軽くグラスを上げるのを見て、老女将は格子戸のところに戻った。突き出しと前菜をちゃぶ台に並べ終わると、もう一度聞いた。「あとの料理は、まだよろしいですか」。
 
 松野が腕時計をみた。午後7時10分だった。「2人が来てからでいいな」。老女将が部屋を出るのを見届け、松野が切り出した。

 「若い連中が来るまでに、いくつか確認しないといけないことがあるから、話を急ごう」
 「わかりましたけど、うちの株式問題についても理解していただきたいんですよ」
 「わかったよ。どういうことなんだ」
 「先輩の大都は社主で大変なのはよくわかりますが、うちは株主の全員が社員とOBです。現役社員は私に人事権があるんで、どうにでもなりますが、OBは簡単じゃないんです」
 「OBだけで3分の1以上持っているのか」
 「ええ、そうです。持ち株比率を現役とOBでみると、ちょうど半々くらいなんです」
 「でも、新聞社の経営形態はどこも同じだろ。違いは、社主がいるかいないかだけだろう」
 「社主は一人、親族などがいても数名でしょ。でも、OB株主は数百人いるんです」
 「相手がたくさんいるから大変、というのか」
 「そうなんですよ。考えようによっては社主より厄介です」

 日本の新聞社の多くは大手全国紙、地方紙に関係なく、世界中どこの国を探しても存在しない、「天然記念物」的な株式会社として運営されている。戦後のどさくさの中で制定された日刊新聞法という「遺物」に基づき会社を組織し、後生大事に守っているからだ。

 日刊新聞法は新聞社の株主を「新聞事業に関係する者」に限り、譲渡制限を認めている。この法律に基づき、株式会社を組織すれば、どんなに日本の経済規模が拡大しても、新聞社の株式を保有できる株主が限られるので、資本市場から資金調達することが難しいなど問題もあるが、その半面、経営陣による私物化に好都合なのだ。

 実際、新聞社の大半は極端な過小資本である。部数第1位の大都は年間売り上げが4000億円を超すのに、資本金はわずか6億円である。部数第3位の日亜も売り上げが2500億円前後あるのに、資本金は30億円である。年間売り上げが2000億円を超す、新聞社以外の大企業で、資本金が100億円未満の会社は皆無と言っても過言ではないだろう。

●外部からのチェックが働かない

 新聞が建前として常々主張しているように、企業には社会的責任がある。その責任は規模が大きくなればなるほど重くなる。その行動は、さまざまな角度からチェックされていなければならない。しかし、新聞社の場合は、仲間内しか株主が存在しないうえ、マスコミも身内には批判の目を向けない。もちろん、監督官庁はなく、行政からのチェックもない。

 つまり、新聞社は外部からのチェック機能がほとんど働かない。ジャーナリストとしての自覚のある優秀な経営者がいないと、堕落するリスクの大きい、特殊な株式会社なのだ。

『日本型リーダーはなぜ失敗するのか』


新聞社のリーダー=社長は?

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