同研究所の統計データや出版社の状況からみると、最も深刻なのが雑誌だ。東日本大震災の影響で11年は前年比6.6%減と大幅にマイナスとなったうえ、9843億円とついに1兆円の大台を割った。その年よりも、12年の実績は悪いのだ。出版社と取次との仕入れ部数の交渉でも、削減され続けている雑誌は多いようだ。
ある雑誌出版社の営業担当者は嘆く。
「まず雑誌は、コンビニエンスストアでさえも売れなくなった。当然、書店でも売れていない。増数したくても、配本する書店が見当たらないという状況だ。アマゾンなどのネット書店くらいしか、もう配本が増える要因はないのかもしれない。それに、売れないからといって、ある大手取次会社のように雑誌の返品上限を決めて、書店ごとの返品数に応じて、次からの入荷部数を削るというやり方は、手荒い気がする。確かに、この取次は主要取引書店をライバルの会社に奪われてしまったにもかかわらず、仕入れ部数は多いし、返品も多かったのだけど……」
だが、利益が出ない苦境に立つのは出版社ばかりではない。取次も窮地に陥っているのだ。例えば、中堅取次のひとつである太洋社がリストラを発表した。60人ほどの希望退職者を募ったうえ、本社を東京・秋葉原に移し、物流機能も埼玉の戸田地区に集約させるというもの。また、11年には栗田出版販売という業界4位の取次が本社の移転と同時に、社員のリストラを行っている。出版社、取次、書店が1冊の本をレベニューシェアする出版界では、取次の取り分は7%と薄利なため、ある程度の売り上げ規模を維持しないと存続できない。
「太洋社のリストラには社員の25%程度、およそ50人が募集に応じたようだ。中堅どころの課長クラス以上がほとんどいなくなる。本当にこれでもつのだろうか? それに同社の専務が反発を買うような発言をしたため、書店がトーハンに帳合変更(取引を変更すること)する動きがみられる。取次の生命線は書店の販売力。このままではどんどん疲弊していくだろう。それと、業績不振を社員のせいにするなど、問題は社長自身にもある」(大手出版社営業幹部)
「明文図書という法律・経済の専門取次が、12月にも自主廃業するのではないかという噂が出た。慌てた同社は11月に『今後の事業方針について』と題した文書を取引先に送付した。そもそも、事業譲渡を模索していたようだが、それが破談となってしまい、今回の噂につながったという。いずれにせよ、経営者自身に事業継続の意思が薄いように思える。やはり、事業規模の小さい取次の経営は苦しいのだろう」(別の出版社営業)
出版社や取次よりも深刻なのは書店。閉店するのは中小の地場書店が多く、年間で1000店前後が減少しているという。ここでは書店の苦境に多くは触れないが、書店店頭の売上データをみていても、前年割れが続いている状況だ。